2018/09/05
東京2020大会のリスク対策
過去にも起こったテロ
いよいよ2年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック競技大会。世界最大の祭典は、夢や感動、大きな経済効果をもたらすだけでなく、世界中の人々が集まることで、さまざまなリスクも併せ持つ。
テロやサイバー攻撃などオリンピックを狙った犯罪に加え、大会期間中の自然災害、熱中症、群衆事故、交通渋滞など、挙げれば枚挙にいとまがない。
オリンピックを狙ったテロは過去に何度か発生している。1972年ミュンヘン五輪では、選手村がパレスチナ系の武闘組織「黒い9月」に襲撃され、選手・コーチら11人、犯人5人が死亡し、警察官1人が殉職する惨事が発生した。
1996年のアトランタ五輪では、開催中に会場近くの公園が爆破され2人が死亡、100人以上が負傷した。2003年に容疑者が逮捕されているが、実行者は同性愛者やユダヤ人、外国人の排斥をとなえる 「アーミー・オブ・ゴッド(神の軍隊)」という準軍事組織グループのメンバーだった。
さらに、アメリカでは2002年のソルトレイクシティ五輪の前年、同時多発テロが発生している。アメリカは国の威信をかけて、ソルトレイクシティオリンピックの成功を誓い、保安活動には、冬季にも関わらず州兵や警察など約1万6000人が動員され、警備費用約3億ドル(約400億円)と当時、過去最大規模の警備体制を敷いた。2014年のソチ五輪では、イスラム過激派グループによるテロを警戒して4万人の兵士や警官による厳重な危機管理体制が敷かれたが、ここまで危機意識が高くなったのも、前年にオリンピックを意識したと思われる路線バスや駅舎の爆破テロ事件が相次いだためだと報じられている。
ちなみに、リオデジャネイロオリンピックではさらにこれらを上回る8万5000人の警備員が動員され、警備不足という新たなリスクを引き起こした。ロンドン、リオ、平昌と、近年のオリンピックでは警備員の確保は大きな課題となっている。脅威が増えればそれだけ警備員が必要になり、その影響は民間施設の警備不足など思わぬ方向に向かう。
一方、サイバー攻撃については、大きな被害は今のところ防げているが、毎回、大会主催者や関連企業に多くの攻撃が仕掛けられていることが報告されている。2012年のロンドン五輪では、サイバー攻撃によって会場を停電させるという脅迫が届き、関係者を震撼させた(実際には攻撃は行われなかった)。リオデジャネイロや、今年の平昌オリンピックでも多くの攻撃があったことが報じられている。
自然災害については、過去のオリンピックで大会期間中に大災害が起きた事例はないが、突風や吹雪など、競技が順延となるような自然現象はいくつも起きている。2008年の北京五輪で開会式が晴天となるよう当局が「人工消雨ロケット弾」を発射したことは記憶に新しい。
災害や渋滞、群衆も懸念材料
また、大会直前に災害や大規模な事故が起きた事例はある。中国では北京五輪が始まるわずか3カ月前に、9万人近い死者・行方不明者を出した四川大地震が起きている。
そして、熱中症。2004年のアテネ五輪女子マラソンでは、酷暑による熱中症のため参加者の約2割が棄権している。日本は過去最高気温の中で競技が行われることになるのかー。サマータイム制を導入すれば、一般国民の体調管理や、ITシステムなどに、別の付加がかかる。
この他、大きな被害は出ていないが、交通渋滞、群衆での事故、通信障害、などさまざまなリスクが考えられる。
では日本では、どのようなリスクに対して、どう備えていけばいいのか。
東京2020大会に向けた危機管理の取り組みをまとめた(写真は建設中の新国立競技場)。
東京2020大会のリスク対策の他の記事
おすすめ記事
-
-
過疎高齢化地域の古い家屋の倒壊をどう防ぐか
能登半島地震の死者のほとんどは、倒壊した建物の下敷きになって命を落とした。珠洲市や輪島市の耐震化率は50%程度と、全国平均の87%に比べ極端に低い。過疎高齢化地域の耐震改修がいかに困難かを物語る。倒壊からどう命を守るのか。伝統的建築物の構造計算適合性判定に長年携わってきた実務者に、古い家の耐震化をめぐる課題を聞いた。
2024/03/28
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月26日配信アーカイブ】
【3月26日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:四半期ニュース振り返り
2024/03/26
-
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月19日配信アーカイブ】
【3月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:副業・兼業のリスク
2024/03/19
-
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
-
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方