【ニューデリー時事】インド政府が、北部のパキスタンとの係争地ジャム・カシミール州の自治権を剥奪した問題で、中心都市スリナガルなどは厳戒態勢下にある。夜間外出禁止令が出されたほか、昼間でも軍や治安部隊が外出を控えるよう呼び掛け、通りからは人影が消えた。電話も遮断され、住民は救急車を呼びに病院に駆け込んでいる状態だ。
 インド政府は5日の自治権剥奪の発表に前後して、州内に約50万人駐屯していた兵士をさらに4万5000人増派。住民の抗議行動や、カシミールの分離独立を目指す過激派のテロを警戒する。
 緊急事態に発令される規定で、屋外で5人以上が集まることを禁止されていることもあり、住民は自由に活動できない状況だ。散発的な抗議行動は起きているもようだが、軍や治安部隊が催涙弾を発射して鎮圧している。
 もともとカシミールでは、インド兵による暴行事件などをきっかけに投石を伴う激しい抗議行動が繰り返されてきた。地元民放NDTVは、5日の政府発表を前に「拘束を迅速化するため60人の特別な治安判事が増員された」と伝えた。政府は発表前に周到な準備を進めていたとみられる。
 現地では、8日までに複数の州首相経験者を含む数百人が拘束されたと報じられている。インディア・トゥデー誌(電子版)によれば、政府が大量の拘束者を収容するため「ホテルやゲストハウス、行政庁舎を即席の監獄として利用している」という。
 現地では4日からインターネットが、5日からは電話が遮断されている。NDTVは8日、「電話がつながらないので救急車を呼ぶため住民が直接来院しなければならない」という病院関係者の声を伝えた。
 また、NDTVは「おそらく初めて(スリナガルに)取材拠点を置く記者に対し、それぞれの滞在先のホテルから警備が厳重な1カ所のホテルに移動するよう命令が出た」と報じた。平時から外国人記者がカシミールで取材するには、インド外務省や内務省の許可が必要で、取得には1週間程度かかる。現地でも取材が大幅に制限されている可能性がある。 

(ニュース提供元:時事通信社)