「復興五輪」を掲げる東京五輪・パラリンピックが今夏、開催される。諸外国からの注目を機に、国は東日本大震災の惨禍から立ち上がりつつある被災地の姿と魅力を伝えたい考えだ。一方、東京電力福島第1原発事故の影響が強く残る福島県が計画する情報発信について、一部の専門家は「教訓を伝える内容が不十分ではないか」と指摘している。
 福島県の内堀雅雄知事は2014年の就任以来、被災地の「光と影」を発信する考えを繰り返し表明。昨年12月の会見では、光として避難指示区域の大幅な減少や、県産農産物が放射能測定で安心して食べられる状況になった点などを例示。一方で、影として、解除区域の居住率が1割程度にとどまる市町村があり、今も風評被害が残ることなどを挙げた。
 国内外に現状を見てもらう機会となる五輪の聖火ルートは、燃料電池などに活用する水素製造拠点(浪江町)やロボットの研究開発拠点(南相馬市)、新設した大熊町役場など「光」の部分が多い。「影」について内堀知事は「われわれ自身の説明も含め、トータルで伝えていく」と述べるにとどめた。
 東京五輪・パラの開幕前に、県は震災と原発事故の記録と教訓を伝える場として、第1原発が立地する双葉町でアーカイブ拠点施設を開所する。原発事故前後の状況を伝える映像や実物資料などを展示するほか、語り部を配置する予定だ。
 ただ、福島大の後藤忍准教授(環境計画)は、展示が復興を強調し過ぎる内容にならないか危惧する。例として挙げるのが、16年にオープンした原発事故後の経過や放射線の知識などを伝える施設「コミュタン福島」(三春町)だ。
 後藤准教授が展示説明文に載っている約1万2300語を分析したところ、使われている数の上位20位に「安全」「利用」といった肯定的な言葉が並んだ。チェルノブイリ原発事故の博物館では、「事故」や「汚染」「死亡」など否定語が多く、肯定語は上位に入らなかったという。
 また、アーカイブ施設を紹介する動画でも、「挑戦」に関する内容が41%を占めたのに対し、「教訓」に関する内容が21%だった。
 後藤准教授は「事故の教訓より、被害からいかに立ち直ったのかというサクセスストーリーの紹介になるのでは」と疑念を呈し、「被害の程度や、何を失敗したのかを展示するのが本来のアーカイブ施設の役割だ」と指摘した。
 県の担当者はコミュタン福島について、「放射線について、子どもたちに楽しんでもらいながら分かりやすく教育するのが施設の趣旨。客観性にはかなり気を付けている」と話した。 
〔写真説明〕福島県が計画するアーカイブ拠点施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」のイメージ図(県提供)
〔写真説明〕福島県が計画するアーカイブ拠点施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」内部のイメージ図(県提供)

(ニュース提供元:時事通信社)