構想から約70年を経て、首都圏の「水がめ」としての役割をスタートさせる八ツ場ダム。地球温暖化の影響で災害が激甚化し、水害への備えの必要性が増す中での船出となった。工事を見守ってきた国土交通省幹部は「当初の計画通り、首都圏の住民を豪雨から守るために必要な施設だ」と期待。ただ、ダムだけで全ての水害を防げるわけではないため、下流での避難対策なども欠かせないと言える。
 関東地方が豪雨に見舞われた昨年10月の台風19号により、試験的に水をためていた八ツ場ダムは数日で貯水率が100%に。その効果もあったためか、利根川水系の下流の堤防決壊はなかった。赤羽一嘉国交相も八ツ場を含めた上流のダム群が機能して洪水を回避できたとの見方を示し、「住民の安全な暮らしに大きく寄与する」と評価した。
 ただ、ダムの運用には課題もある。大量の降雨により貯水量を超えた場合、ダムの決壊を防ぐために緊急放流を行うが、下流では急激に増水し、氾濫の危険性が増す。実際に2018年の西日本豪雨では、国交省が管理するダムで緊急放流をしたことで下流で氾濫が発生。流域の住宅が浸水する被害が生じた。
 八ツ場ダムが位置する利根川水系の流域人口は計1300万人に上る。昨年の台風19号では、防災情報が住民に届いていないといった課題が浮かび上がった。災害時のダム下流域への安全対策について、国交省担当者は「河川の水位予測情報を充実させたり、増水時の避難につながる呼び掛けを工夫したりしなければいけない」と話している。 

(ニュース提供元:時事通信社)