【ニューヨーク時事】米ミネソタ州で黒人男性が白人警官に拘束された際に首を圧迫され死亡した事件で、全土に広がった抗議デモは5日目に突入した。「白人の沈黙は暴力」「100年堂々巡り」。デモ参加者は人種差別を背景とする暴力と抗議の繰り返しで長年何も変わらない社会の変化を求めている。
 新型コロナウイルスの感染拡大で依然外出規制下にあるニューヨークでは30日、マンハッタン南部などでデモが起きた。参加者は若者が圧倒的に多く、段ボールに手書きしたサインを手に「白人の沈黙は暴力」「手を挙げろ。撃たないで」「正義なければ平和もなし」などと叫びながら行進した。多くは平和的だが、一部は警官を執拗(しつよう)に罵倒したり、暴徒化したりして、拘束される人もいた。
 「多くの白人、特に警察が黒人を支配するために力を行使している。もうたくさんだ。声を上げるほど、聞いてもらえる」。デモに参加した銀行で働く黒人のプリンス・ティマシさん(22)はこう訴える。
 米国では丸腰の黒人への白人警官による暴力が後を絶たない。近年は目撃者が拘束時の様子をスマートフォンで撮影したものがインターネット交流サイト(SNS)で拡散され、表面化するようになったが、暴力が続く状況は変わっていない。ティマシさんは「この100年ずっと堂々巡りだ。このままであっていいわけがない」と強調。「白人と同じ権利が必要だ。米国では白人がすべてを手に入れ、悪いことをしても処罰されない。黒人は何か一つでも悪いことをすれば殺される」と語った。
 米国ではコロナ禍で低所得者の多い黒人やヒスパニックが最も影響を受けている。ニューヨークをはじめ各地で、人口に占める感染者の割合は白人を大きく上回り、ここでも格差が浮き彫りになっている。低所得者向けの公営住宅で隔離が難しいことなどが背景にある。
 家庭教師の黒人アレグザンドリア・トーマスさん(21)は「(外出規制下でも家で)座って『黒人の命も大切』と訴えるだけで、立ち上がって闘わなかったら偽善だと思った」と話す。「ウイルスの流行が続いているのに(警察が事件によって)私たちがここに来る状況を引き起こした」と批判。「黒人は恵まれていない人が多いから病気になる人も多い。それなのに(事件で)黒人をまた殺して私たちを(デモのために)外出させるようあおっている。私たちの同胞を殺す新たな戦術よ」と警察への不信感をあらわにした。
 一方、デモには白人やヒスパニック、アジア系も参加していた。非営利団体で働くヒスパニックのサマンサ・ロドリゲスさん(28)は「沈黙は暴力。沈黙を選ぶなら抑圧者と同じになる」と強調。ミネソタ州の事件については「(動画で)注目されただけで、殺されているたくさんの黒人の一人にすぎない」と語り、法律や警察制度の変更を訴えた。 
〔写真説明〕30日、米ニューヨーク市で、人種差別に抗議するデモ
〔写真説明〕30日、米ニューヨーク市で、警官とにらみ合うデモ参加者

(ニュース提供元:時事通信社)