【ソウル時事】北朝鮮が韓国との対決姿勢を一段と鮮明にしている。金正恩朝鮮労働党委員長を非難するビラを散布したとして南北共同連絡事務所を爆破。朝鮮人民軍総参謀部は17日、南北協力の象徴とされる開城工業地区に軍部隊を展開する方針を明らかにした。北朝鮮国内では経済苦境に不満が高まっており、文在寅政権を「敵」とすることで引き締める狙いがあるとみられる。
 批判攻勢の口火を切ったのは、南北関係改善を主導してきた正恩氏の妹、金与正党第1副部長。17日の談話で「北南関係のあらゆる問題をいちいち(米国の)ホワイトハウスにお伺いを立ててきたことが今日の残酷な結果となった」と、経済制裁の枠内でしか協力を進められない文氏へのいらだちを隠さなかった。
 南北首脳は2018年9月の平壌会談で、中断している開城工業団地と金剛山観光事業を再開する方針で合意。両事業は北朝鮮にとって貴重な外貨獲得手段となるはずだったが、19年2月のハノイでの米朝首脳会談が決裂し、合意は一切具体化されていない。
 新型コロナウイルスの感染拡大も、北朝鮮経済に打撃を与えている。1月に中国との国境を封鎖し、外貨獲得につながる外国人観光客の入国を停止した。経済苦境は深刻とみられ、正恩氏の肝煎りで始まった元山の観光地区開発も暗礁に乗り上げている。
 丁世鉉・元統一相は17日のラジオ番組で「住民から金正恩氏ら指導部への不満が出ている。敵対的行動に出て内部で結束を固める必要がある」との見方を示した。
 北朝鮮側が軍の再展開を表明した開城工業地区は、南北軍事境界線に近く、韓国の首都ソウルまで約70キロの軍事的要衝だ。正恩氏の父、故金正日総書記が2000年6月の初の南北首脳会談の合意を踏まえ、軍の反対を押し切って部隊を後方に撤退させた経緯がある。
 北朝鮮が連絡事務所を爆破したのは、その南北首脳会談による共同宣言発表から20年を迎えた翌日だった。統一省高官は、北朝鮮による一連の軍事的挑発は、初会談以前の「過去に戻す行為だ」と批判し、南北関係が対決局面に再び戻ることを懸念した。 
〔写真説明〕南北軍事境界線を挟んで対峙(たいじ)する北朝鮮軍(向こう側)と韓国軍の監視所=17日、韓国京畿道坡州(EPA時事)
〔写真説明〕北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の特使として訪韓し、文在寅大統領(左)と会談する金与正党第1副部長(右)=2018年2月、ソウル(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)