【ソウル時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を批判するビラ散布に端を発し、韓国への軍事的圧力を強めていた北朝鮮が一転して緊張激化を抑制した。韓国国防省は24日、「緊張緩和に役立つ」と歓迎の意を表明。だが、融和に立ち返る機運はなく、不安定な局面が当面続く見通しだ。
 「最近の情勢を評価し、朝鮮人民軍総参謀部が提起した対南(韓国)軍事行動計画を保留した」。朝鮮中央通信は24日、北朝鮮で23日に正恩氏の指導の下、党中央軍事委員会予備会議が開かれ、保留決定が下されたと報じた。
 脱北者団体によるビラ散布への報復措置として、北朝鮮は16日、南西部・開城の南北共同連絡事務所を爆破し、韓国との対話拒否を行動で示した。さらに次の段階の措置として開城への軍部隊展開などの四つの計画を立案し、韓国側は「強力な対応」を警告していた。
 北朝鮮が態度を一変させたことについて、韓国専門家からは「どういう意図で保留したのか疑問だ」との声が上がっている。北朝鮮側は24日、再設置したばかりの韓国向け宣伝放送用拡声器を撤去し、北朝鮮宣伝サイトから韓国非難の記事も削除した。
 北朝鮮による一連の挑発行動の背景として、制裁の長期化や新型コロナウイルス感染に伴う経済的苦境から、住民の不満をそらす目的があったとの指摘がある。金東葉・慶南大極東問題研究所教授は、北朝鮮兵士は建設現場に駆り出されているのが実態で、過度な緊張は逆に北朝鮮側の混乱を招きかねないと分析した。
 一方、韓国の鄭景斗国防相は22日の国会で、韓国への圧力を主導した金与正党第1副部長について「悪役を担当している」と指摘していた。今回、正恩氏が前面に出て緊張回避を演出することで、硬軟織り交ぜて韓国に揺さぶりを掛ける狙いもありそうだ。 
〔写真説明〕北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=朝鮮中央通信が5月24日配信(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)