世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスが引き金となり、世界経済の中国への依存からの脱却を図る「脱中国化」の動きが加速している。主導するのは、中国の大国化に警戒を強めるトランプ米政権。国際的な原材料・部品の供給網(サプライチェーン)から、中核を担う中国の締め出しを狙い、日本など有志国を巻き込んだ再編を画策する。次世代技術や安全保障をめぐる覇権争いでは、中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)排除に向けた包囲網の構築が進められている。
 ◇「米中経済断絶」
 「中国と関係を完全に断ち切る」。コロナ禍で支持率低下に苦しむトランプ大統領は5月、感染拡大を中国の責任と糾弾し、経済関係断絶の可能性にまで踏み込んだ。同じ頃、米国務省が描く脱中国化構想が表面化。「経済繁栄ネットワーク」と称する構想は、次世代通信規格(5G)から医療物資まで幅広い分野を網羅し、日本や韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド、ベトナムの参加を想定する。今秋の米大統領選に向けた思惑先行の面もあるが、「アジア太平洋以外への拡大」(米高官)も視野に入れた世界戦略だ。
 いち早く同調したのが日本で、安倍晋三首相はコロナ禍で供給不足に陥った医療物資や自動車部品を念頭に「一国への依存度の高い製品について生産の国内回帰を図る」と表明、国内生産を促す企業支援策を打ち出した。韓国も優遇税制などで調達先の多元化を後押しする計画だ。
 こうした中国以外の拠点や調達先を確保する「中国プラスワン」の動きは「コロナ前から増えた」(米戦略国際問題研究所)とも指摘される。ただ、民間企業としても容易ではなく、「いきなり全部国内に持ってくるのは現実的ではない」(経団連の中西宏明会長)との本音も漏れる。
 ◇ファーウェイ外しで足並み乱れも
 5G技術競争や安保に絡む「ファーウェイ外し」も、コロナ後の米中関係悪化を機に加速している。米政権は5月、同社に対する輸出禁止措置を強化し、取引先の台湾企業は供給停止を強いられた。今後、日韓を含め世界の企業にも制裁の影響が及ぶとみられ、「企業戦略の再考」(韓国サムスン電子)を迫られている。
 米政権はファーウェイ対抗軸形成に向け、露骨な民間介入も辞さない構えだ。欧州通信機器大手エリクソンやノキアへの出資を通じた「米欧通信連合」構想に加え、スパイ活動への関与が疑われるファーウェイと取引しないことを条件に「クリーンな通信会社」を指定、日本のNTTなど計7社にお墨付きを与えて連携を促した。
 だが、各国の足並みは必ずしも一致していない。特に欧州は、英国が規制に傾く一方、安価なファーウェイの5G製品が既に普及するドイツやフランスでは「いったん供給が始まると、元に戻すのは難しい」(独通信最大手ドイツテレコム)のが実情だ。
 米国と中国が互いに制裁関税を掛け合う「貿易戦争」が本格化してから2年。世界最大の輸出国である中国の影響力は、コロナ後も弱まりそうにない。米中摩擦を機に安保と経済が複雑に絡み合う構図が一段と強まる中、日本貿易会の小林健会長は「安保は米国に依存するが、中国とは経済的な結び付きが深い」と強調。新たな国際ルールの構築を急ぐよう訴えた。 

(ニュース提供元:時事通信社)