ガントレットウォークとはどんな卒業式なのか?

振り返ってみていかがでしたか? 連載を通じて、あなたにはどのような「変化」が起きたでしょうか?

このように訓練の最後に「振り返りの時間」を持つことはとても大切です。そして最終回では、有事即応人材を育成するための「ガントレットウォーク」をお教えします。ガントレットとは、甲冑の籠手。ガントレットウォークとは、最後の通過儀礼として「訓練参加者を祝福する卒業式」です。

ステップは六つあります。

1. 参加者は、2列に並びます
2. 音楽を流します(“Pomp and Circumstance(威風堂々)”など)
3. 先頭に並んでいる人が中央に進み出て、訓練を振り返り、抱負を話します
4. 振り返りと抱負を話し終わった人は、2列の間を通って最後尾に並びます
5. 列を通る間、他の参加者は歓声を上げたり、拍手をしたり、背中を軽く叩いて激励します
6. 訓練担当者は列の最後尾で待ち受けて、到達した参加者に労いの言葉を掛けて、修了証を渡します

なぜ、ガントレットウォークが必要なのか?

皆さんが仕事でプロジェクトが終わった時、ひと段落した時、皆さんも打ち上げ、懇親会、お祝いなど「労い」の席を設けるのではないでしょうか。

ガントレットウォークが必要な理由は三つあります。

1. ゴールに到達したことを明確化できるから
2. 参加者にスポットライトを当てて、変化を後押しできるから
3. 訓練に参加してくれたことを感謝し、また集う時のために労う場となるから

一つずつ説明します。

1. ゴールに到達したことを明確化できるから
ゲームには、ゴールがあります。前回の記事でも、「ゲーム固有の四つの特徴」をご紹介しましたね。防災訓練という「非日常」を体験した皆さんは、神経が昂って興奮状態にあります。

ここで「日常へ帰還」して、興奮を沈静化させる必要があります。ご自宅へ帰られた後に、リラックスして、ゆっくりとお休みいただきたいのです。「あなたは無事、ゴールへ到達しました!」と明確化してあげると、参加者も安心して日常へ戻れるでしょう。

また訓練担当者のメリットは、最後の成功イメージとして、ガントレットウォーク(卒業式)をしているゴールイメージを訓練前に明確化することで、防災訓練を準備する推進力が生まれることです。

2. 参加者にスポットライトを当てて、変化を後押しできるから
祝い事にはパワーがあります。「変化を後押し」するための突破力があります。それは、火山が爆発するかのような「お祭り」のエネルギーです。

ヒーローズジャーニー(英雄の旅)という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 参加者の皆さんは、防災訓練という冒険(ゲーム)を成し遂げた「英雄」です。参加者にスポットライトを当てて、その成功を祝うことで、それぞれが、真のヒーロー、ヒロイン(有事即応人材)へと変身を遂げるのです。

3. 訓練に参加してくれたことを感謝し、また集う時のために労う場となるから
今、リモートワークの影響で、会社や組織のリアルな人間関係がますます希薄になっています。
一人の力は限られているので、災害時だけでなく、平時でも仲間とともにチームでプロジェクトを推進していく必要があります。そこで大切にしたい価値観が、パートナーシップです。

防災訓練に参加してくれた仲間に感謝し、労いの気持ちを表現することで、再び「冒険に出発する」ときに仲間を募集しやすくなります。あなたの協力者を獲得できるのです。

もしも労いがなかった場合、次回の参加協力は困難かもしれませんので、くれぐれも忘れないようにしましょう。

ガントレットウォークとは「行動の変化」

連載では、「人質立てこもり事件の説得交渉術」もご紹介してきました。最終回で紹介する第五関門は、「行動の変化」です。

前回の第四関門「影響力の行使」は、相手に自分の存在を強調したり、注意を引きつけたり、抑制したり、実質的な説得交渉をしました。このシーンは、緊迫した「クライシス」でした。

それに対して、第五関門「行動の変化」は「クライマックス」です。相手の怒り、恐怖、プライドなど負の感情をケアして、恨み・つらみを浄化して、「人質の無事解放」「犯人の投降」へと「行動の変化」が起こる最後の仕上げとなります。

刑事とガントレットウォーク

私が刑事をやっていた頃の話です。捜査本部や事件解決の打ち上げ(けじめ)、宿直事件のお清め、同僚の栄転祝いなど、祝いや労いの席は頻繁にありました。

中でも記憶に残っているのは、関東管区警察学校・警部補任用科の卒業式です。刑事課程だった私たちは、団結を深めるために同期や教官と頻繁に飲み会を開いていました。

卒業式では、最後のクライマックスで学級ごとに校内を行進するパフォーマンスがありました。2カ月間ご指導いただいた刑事教官室からの歓声、声援は、他のどの部門の教官たちよりもひときわ大きく、当時の私も大変感動して、署に出たら捜査係長として「絶対にいい事件をやろう! 刑事教官たちの期待に応えよう!」と決意を新たにしたのでした。