8月のお盆の時期を目前に控え、新型コロナウイルスの感染対策上、帰省をどうするかをめぐり政府内のずれが表面化した。県をまたぐ移動も伴う家族などの旅行は「Go To トラベル」で強力に推進する一方、帰省は高齢者への感染リスクを考慮し、国民に慎重な検討を呼び掛けた。矛盾とも取れる対応に、混乱は避けられそうにない。
 西村康稔経済再生担当相は2日の記者会見で、お盆の帰省について「慎重に考えないといけないのではないか」と表明。これに対し、菅義偉官房長官は3日の会見で「帰省を制限する、しないの方向性を述べたものではない」と行動制限の意図を否定した。だが、西村氏は同日、この後の会見で「おじいちゃん、おばあちゃんと会えば感染リスクがある。十分注意してもらわないといけない」と慎重な姿勢を崩さなかった。
 7月31日の新型コロナ対策分科会では、8月中旬にかけて全国的に本格化する帰省の在り方が問題提起された。無症状感染の多い若年層と、重症化リスクが高い高齢者の接触機会も増えるため、専門家らからは帰省による感染拡大を懸念する声が上がる。帰省に慎重な対応を訴えた西村氏の2日の発言は、こうした経緯を踏まえたものだ。
 一方、政府は6月19日、県をまたぐ移動自粛要請を原則解除。7月22日には、全国で感染者が急増する中、「Go To トラベル」キャンペーンに踏み切った。感染拡大を防ぐ観点から、帰省と家族旅行にどれだけの違いがあるのか。西村氏は「家族旅行で感染防止策を講じて過ごすのは問題ない。祖父母と過ごすとなると事情が変わってくる」と説明するが、分かりにくさは否めない。
 そもそも、新型コロナをめぐる政府の対応は「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる」と再三にわたり批判されてきた。背景には感染拡大防止と経済活動再開のどちらに重きを置くか、政権内で意思統一し切れていないことがある。
 西村氏は感染防止策を最優先したい専門家と日常的にやりとりしていることが、発言ぶりに影響しているようだ。これに対し、菅長官は「少しでも経済を動かそうという思いだ」と言い切る。政府関係者によると、帰省をめぐる分科会の議論に際し、首相官邸は「『Go To』には触れないように」とくぎを刺しているという。
 政府内の「溝」が浮き彫りとなる中、安倍晋三首相の存在感は希薄だ。3日の政府・与党連絡会議でも「『新たな日常』を早期に実現し、日本経済をしっかり回復軌道に戻すため、全力を尽くす」と基本方針を繰り返しただけだった。
 各地の自治体首長からは帰省の是非に関する発言が相次ぐなど、帰省時期を前に波紋が広がる。政府は見解の統一を迫られており、西村氏は会見で、週内にも開く次回の分科会を受け「政府方針をお示しできればと考えている」と語った。 
〔写真説明〕記者会見する西村康稔経済再生担当相=3日午後、東京都千代田区

(ニュース提供元:時事通信社)