2020/08/06
防災・危機管理ニュース
内戦が続く中東イエメンに派遣されていた国際医療団体「国境なき医師団(MSF)」のイエメン活動責任者、萩原健さん(53)が6日、同国の新型コロナウイルス対応の課題について、「長引く紛争で医療体制が既に崩壊目前という状況で新型コロナが出現した。国際社会からの支援が停滞すればそれこそ医療崩壊する」と訴えた。東京都内の日本記者クラブでの会見で語った。
イエメンでは2015年以降、サウジアラビアが支援する暫定政権とイランに近い武装組織フーシ派が戦闘を続けている。国内13州で活動してきたMSFは、新型コロナの世界的流行を受け、現地当局を支援する形でコロナ治療センター6カ所を開設し、医薬品供給や感染予防研修を行っている。
会見には、7月末に帰国したプロジェクト責任者の落合厚彦さん(58)もオンラインで参加。中部イッブ州にあるコロナ治療センターの立ち上げでは「治療センターで働くことを怖がるスタッフが多くて人集めに苦労した」と振り返った。また、市民の間で「治療センターで注射を打たれて死ぬ」といった誤った情報が広がり、受診や治療を拒否する人が増えたため、患者と家族の面会の場を設けるなど透明性の確保に努めたという。
世界保健機関(WHO)の5日付の発表では、イエメンの新型コロナの感染者数は累計1764人、死者数は507人。しかし、萩原さんによれば、重症化するまで受診しない患者も多く、「どこにどれだけの患者がいて、(新型コロナが)拡散しているのかどうかも把握が困難」といい、劣悪な衛生環境の中でさらに感染が拡大する可能性が懸念されている。
〔写真説明〕記者会見する「国境なき医師団」のイエメン活動責任者、萩原健さん=6日、東京都千代田区
〔写真説明〕新型コロナ治療センターの集中治療室で治療を受ける患者=7月25日、イエメン中部イッブ州(国境なき医師団提供)
(ニュース提供元:時事通信社)


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