【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)欧州委員会が、2030年までのEUの温室効果ガス削減目標を1990年比で55%減(現行40%減)に引き上げることを正式に提案した。ただ、加盟国や欧州議会には異論もあり、法制化や目標実現への課題は多い。
 「目標は野心的かつ達成可能であり、欧州にとって有益なものだ」。フォンデアライエン欧州委員長は16日、欧州議会での演説で強調した。新目標は、50年に温室ガス排出を「実質ゼロ」にする方針を法制化する「欧州気候法案」に反映。議会や各国の合意を経て同法案の成立を目指す。
 ただ、欧州議会では、環境委員会が11日、30年目標を「60%減」にするよう求める報告書を採択。気候法案の最初の本会議採決は来月に行われる予定だが、見通しは不透明だ。一部には「パリ協定」順守には「65%減」が必要との声もある。
 一方、加盟国では化石燃料依存の高い東欧諸国に目標引き上げへの警戒が根強い。特に石炭火力が電力の7割超を占めるポーランドは16日、「負担は均等ではなく、排出量が多い国ほど重くなる」(気候省)と懸念を表明。今後の首脳会議での議論難航は必至だ。
 カギを握るのは、各国経済の脱炭素化に向けたEUの資金支援だ。欧州委は、新型コロナウイルス禍からの経済再建として来年以降、7500億ユーロ(約92兆円)の巨額資金のうち、37%を気候変動対策に投じる方針も表明している。
 また、EUだけで脱炭素化に先走れば、国際的な競争力を失う結果にもなりかねない。このためフォンデアライエン氏は輸入品への「国境炭素税」導入にも意欲を示した。ただ、域外諸国の反発も見込まれ、政策協調も重要課題となる。特にEUとの貿易摩擦を拡大させ、パリ協定離脱も決めたトランプ米大統領が11月の大統領選で再選されるか否かにも大きく左右されそうだ。 
〔写真説明〕16日、ブリュッセルの欧州議会で演説する欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)