2020/12/12
防災・危機管理ニュース
製薬会社「小林化工」(福井県あわら市)の「爪水虫(つめみずむし)」などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入していた問題で、同社は12日、服用して10日に死亡した患者が首都圏の病院に入院していた70代女性だと発表した。同社は自主回収を始めているが、死者が判明したのは初めて。
亡くなった女性が服用したのは、イトラコナゾール錠50「MEEK」のロット番号「T0EG08」。小林広幸社長は12日、記者団の取材に「重大な過失を起こしたことを深くおわびする。責任の重大さを痛感している」と謝罪した。死亡との因果関係について詳しく調べるとしている。
県によると、問題の錠剤を処方されたのは31都道府県の364人。最も多いのは大阪府の58人で、次いで徳島県57人、岐阜県49人、東京都35人など。
同社によると、同じロット番号の錠剤は約9万錠あり、服用後に意識を失ったり、ふらついたりするなどの健康被害が12日時点で134件寄せられている。このうち救急搬送や入院が確認された事例(退院者を含む)は33件、自動車などによる事故は15件に上る。
薬は厚生労働省の承認を得ていない工程で製造されており、原料を継ぎ足す際に、睡眠導入剤の成分である「リルマザホン塩酸塩水和物」を取り違えて入れたとみられる。同社ではダブルチェックが機能せず、見抜けなかったという。県は9日に同社を立ち入り調査。医薬品医療機器法違反に当たる可能性もあるとみて調べている。薬は医師の処方箋が必要で、市販されていない。
問い合わせ先は小林化工学術部(0120)370690。
〔写真説明〕水虫薬を服用した患者が死亡したことを受け、謝罪する製薬会社「小林化工」の小林広幸社長(中央)ら=12日午後、福井県あわら市
(ニュース提供元:時事通信社)

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