【ワシントン時事】バイデン次期米大統領は新政権の米通商代表部(USTR)代表に、オバマ前政権下のUSTRで中国問題の法律顧問を務めたキャサリン・タイ氏を起用する。中国の不公正な貿易慣行に対抗するルールづくりを加速させる狙いだ。世界の経済連携に米国不在の状況が続く中、日本などの同盟国を巻き込んで「中国包囲網」を築けるか。新代表の交渉力が試される。
 バイデン氏は11日、米中摩擦への対応が優先課題だと明言した。トランプ政権は、国有企業を優遇する補助金など中国の構造問題を棚上げしており、タイ氏に試練が待ち構える。世界貿易機関(WTO)訴訟を担当した経験を生かし、市場競争をゆがめる慣行に厳しい姿勢で臨む構えだ。
 中国に是正を迫る手法として「同盟国と連携したルール策定」(バイデン氏)を目指す。現政権が単独主義を掲げて多国間協議に背を向けた結果、国際ルールの整備は遅れた。バイデン氏は就任早々に同盟国との協調立て直しに着手。タイ氏も、空席が続くWTOトップ選出を含め、他国との複雑な利害調整に奔走することになりそうだ。
 積み上がる制裁関税の扱いも焦点となる。同盟重視のバイデン氏は「懲罰的な手法」に否定的で、現政権が日本や欧州製鉄鋼に上乗せした関税の撤回に動く可能性がある。一方、対中国の関税は「交渉材料」として当面見直さない考えを米紙に明かしている。タイ氏は中国の貿易慣行に目を光らせつつ、関税の行方を決める重責を負う。
 アジアでは「米国抜き」の巨大貿易圏が相次ぎ誕生。さらに中国は11月、環太平洋連携協定(TPP)への参加意欲を電撃表明した。存在感が高まる中国に対し、バイデン氏は「自国に有益な制度づくりを狙う動き」と危機感を強める。
 ただ、TPPなどの自由貿易協定交渉入りには、議会と世論の説得という壁が立ちはだかる。民主党は新型コロナウイルス危機への配慮もあり、当面は「新たな貿易協定交渉に入らない」と大統領選で公約した。保護主義に傾いた自国産業に目配りしながら、中国との覇権争いに立ち向かえるか。タイ氏は難しいかじ取りを迫られている。 

(ニュース提供元:時事通信社)