東京電力福島第1原発事故から間もなく10年。除染が進み、政府による福島県沿岸部の避難指示は、帰還困難区域を除いて解除された。しかし、10市町村の旧避難区域での居住率はなお31.8%にとどまる。避難の長期化で生活基盤を移した住民が多く、帰還者数は頭打ちの状態だ。地元自治体は存続への危機感から、住宅補助の充実や雇用創出に注力し、移住者の呼び込みに取り組む。
 「周りに何もないけど、やっぱり広い家は落ち着くね」。2019年4月、一部で避難指示が解除された大熊町に帰還した庄司多喜さん(87)は、復興住宅に1人で暮らす。同県会津若松市に避難したが、慣れない除雪作業に苦労し、海沿いで温暖な古里に戻ってきた。
 町内の小売店は品ぞろえが十分でなく、買い物のために隣町までバスで通うが、本数が少ないのが悩みの種。コンビニや雑貨店が入る商業施設が町内に今春オープンする予定で、「歩いて買い物できるのでありがたい」と心待ちにする。
 10市町村の居住率(住民登録者数に占める現居住者の割合)を見ると、居住再開まで約6年を要した浪江、富岡両町は1割台にとどまり、特に帰還が進んでいない。復興庁などが昨夏、両町民に行った意向調査では、避難者が帰還に向けて必要な要素として、医療・福祉施設や買い物環境の充実を挙げる声が多かった。

(ニュース提供元:時事通信社)