新型コロナウイルス対策の柱となるワクチン接種をめぐり、65歳以上の高齢者向けの開始まで1カ月余りとなった。全国の自治体は急ピッチで準備作業に追われるが、国からの情報不足が大きな懸念材料となっている。各地で「何の情報もなく、計画の立てようがない」といった戸惑いの声が相次いでいる。
 ◇史上最大作戦
 各自治体では、接種環境を整えるため、さまざまな工夫が検討されている。青森県むつ市は、集団接種の予約に無料通信アプリ「LINE(ライン)」を活用。市の公式アカウントを通じ、日時や会場を選択でき、市からは副反応などの情報を発信する。
 兵庫県洲本市は接種予約した市民を対象に、自宅から接種会場までの往復のタクシー代金を全額補助する。交通手段を確保し、高齢者らの接種を促す。一方、石川県小松市はワクチン接種に万全を期すため、4月の定期人事異動を今年は凍結する。和田慎司市長は「自治体の存在理由が問われる『史上最大の作戦』だ」と意気込む。
 ◇見通し立たず
 しかし、優先接種となる高齢者向けですら、自治体向けのワクチン供給計画は定まっていない。政府は当初、接種開始時期について「4月1日」を目指してきたが、2月下旬には「4月12日」に修正した。しかも、同日から接種できるのは全国でわずか5万人分。4月第2週、第3週には計50万人分を全国に輸送し、4月末からは規模を大幅に拡大する方針だが、国内の高齢者3600万人のどこまで行き渡るかは依然不透明なままだ。
 全国最多の高齢者(約310万人)を抱える東京都でも、4月第3週分までに供給されるのは約2万2000人分で全体のわずか0.7%。都は今月4日、世田谷区、八王子市など高齢者の人口が多い自治体から配分する計画を市区町村に通知した。都の担当者は「『いつ届くのか』という各自治体の不安解消に少しはつながったと思う」と話すが、「量は全く十分ではなく、先が見通せないことに変わりはない」といらだちを隠せない。
 大阪府は、府内全市町村の希望者向け接種完了目標をこれまでの「9月末」から「10月末」に1カ月先送りした。市町村には「人口割り」で配分する。吉村洋文知事は、当初は数十人分しか配れない自治体もあるとした上で「(国からの配分量は)少な過ぎる」と苦言を呈した。
 ◇絵に描いた餅
 むつ市では、6月末までに希望する全ての高齢者への接種を終える計画。ただ、担当者は「国から供給がなければ市の計画も絵に描いた餅だ」と困り果てる。
 島民の一斉接種を検討している九州地方の自治体担当者は、河野太郎規制改革担当相がワクチン輸送を担当していることを踏まえ、「河野さんじゃなかったら、情報はもっと出てなかったかもしれない」と一定評価しつつ、こう訴えた。「情報がこないのが一番の不満。いつ、どのくらい、どういう形で配分されるのか、期日と量を示してほしい」。 
〔写真説明〕青森県むつ市が行った新型コロナウイルスワクチンの集団接種の予行演習で、健康観察のため待機する様子=2月19日、同市(同市提供)
〔写真説明〕青森県むつ市で新型コロナウイルスワクチンの集団接種を想定した予行演習に参加した宮下宗一郎市長=2月19日、同市(同市提供)

(ニュース提供元:時事通信社)