(写真:イメージ)

こんにちは。元知能犯刑事、榎本澄雄です。

今回は「100年企業の成長を今すぐ守る!『捕食者』の検分方法〜その3 第5回 刑法第246条 詐欺罪」というテーマです。

ポイントは三つ。
1. なぜ、詐欺師は逃げないのか?〜詐欺師の生態
2. なぜ、詐欺事件の捜査は進まないのか?〜告訴相談の切り開き方
3. どのように詐欺師を見分ければよいのか?〜詐欺師の見分け方

です。

前回は「なぜ、詐欺事件の捜査は進まないのか?〜告訴相談の切り開き方」がメイントピックでした。「まともな知能犯刑事に出会える1%の確率」「管轄警察署のたらい回しにどのように対抗するか」「だまされてはいけない知能犯刑事の特徴」などについてお話ししました。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/46409

今回は「なぜ、詐欺事件の捜査は進まないのか?〜告訴相談の切り開き方」の続きです。「疑惑の相談簿」「詐欺事件の告訴相談をしたのに、何の記録にも残してないって、刑事さんそれってどういうことですか?」「告訴相談の切り開き方〜七つのステップ」「私がだまされた事件と相手の詐欺師について、注意喚起のためSNSで拡散したいのですが、どう思いますか?」などについて、お話しします。

疑惑の相談簿

詐欺事件ではありませんが、2019年10月に福岡県太宰府市で36歳の主婦が約1カ月にわたり、女性と男性に監禁・暴行され死亡した事件(太宰府市主婦暴行死事件)がありました。報道によると、被害者の親族は佐賀県警に合計14回も相談していたとのことですが、事件化されないままに被害者は死亡。遺族が当時の「相談簿」を取り寄せたところ、警察内部の判断では「事件は解決している」と記載されており、相談当時の状況から警察の捜査怠慢が問題視されています。批判を受けた当時の県警本部長は体調不良を理由に退任しました。

相談簿とは、被害者や被害関係者が警察に事件相談に来た際、事情を聞いた警察官が必ず、作成するものです。警察では過去にストーカー事件の相談を迅速に捜査しなかったため被害者が死亡した事件(桶川ストーカー殺人事件)があり、私が警察にいた当時から相談簿の運用・管理はかなり厳格に行われていました。

具体的には刑事(捜査員)が事件相談を受けると、犯罪が成立するかどうかにかかわらず、すぐに警察署の端末から警察本部の相談等管理システムに相談内容を入力します。システムに登録が終わったら、相談簿を出力して、警察署の場合は課長、副署長、署長と必ず持ち回りで決裁を受けます。決裁権者の各幹部も相談事案を事件化すべきかどうか、どのように捜査するのか、かなり突っ込んで担当官に質問してくることが常でした。事件相談を適切に処理しないことは、被害の拡大という「市民の脅威」であり、さらには警察不祥事になり得る「警察の信用失墜行為」だからです。

ここで「警察職員の職務倫理及び服務に関する規則第5条 信用失墜行為の禁止」の条文をチェックしておきましょう。

警察職員の職務倫理及び服務に関する規則
第5条(信用失墜行為の禁止)

警察職員は、国民の信頼及び協力が警察の任務を遂行する上で不可欠であることを自覚し、その職の信用を傷つけ、又は警察の不名誉となるような行為をしてはならない。

「詐欺事件の告訴相談をしたのに何の記録にも残してないって、刑事さんそれってどういうことですか?」

先日、私の友人がある被害に遭ったと警察署へ相談に行ったそうです。その後、事件の進捗(しんちょく)がよく分からないため不安に思って、私に相談してきました。私はあくまでも友人として、今回の記事に書いたようなアドバイスを簡単に伝えて「相談簿の受理番号」を聞くように言いました。そして友人が後日、警察署へ電話で「相談簿の受理番号を教えてほしい」と尋ねたところ、何とその担当官は「相談簿を作成していなかった」そうなのです。

告訴等相談簿

私の記憶では、生活安全課に対するストーカー相談などの記録は、「生活安全相談簿」という名称で、刑事課知能犯捜査係に対する詐欺事件など告訴・告発事件の相談記録は、「告訴等相談簿」という名称だったと思います。

先ほど申し上げた通り、警察では事件相談を受けると、すぐに相談簿を相談等管理システムに入力し、所属長まで持ち回りで決裁を受けることが決まっています。そして相談簿を入力した段階で、自動的に番号が発行される発番システムなので、事件相談をしたにもかかわらず「相談簿が存在しない」とか、「相談簿の受理番号が分からない」という事態は、通常考えられないことなのです。

(余談ですが、以上のような事情からあくまでも私個人の意見としてお聞きいただきたいのですが、太宰府市主婦暴行死事件の相談簿が、相談当時に適正に作成されていたのかどうか、署長まで持ち回りで決裁を受け、捜査幹部が具体的に事件指揮していたのかどうか、正直なところ疑問に思います)

相談簿は「データベース」で管理されている

相談簿を登録する際に相談等管理システムへ入力する事項は、関係者や関係会社の氏名(名称)、住所(所在地)、電話番号、メールアドレス、使用車両のナンバー、口座情報など可能な限り詳細に及んでいた、と私は記憶しています。皆さんはその理由がお分かりでしょうか?

警察のあらゆる事件相談は、この「データベース」で管理されているため、事件相談を受けた際に同じ氏名の関係者が繰り返し事件の相手方として相談を受けていないか、つまり他にも余罪がありそうかどうかを「検索」すれば、事件化の判断がしやすくなるからです。また、相談簿に入力した情報が別の未解決事件を捜査する上で「突破口」になる可能性もあります。ですから刑事(捜査員)である以上、事件相談や相談簿を適切に取り扱わないことは怠慢だと言えるでしょう。