【イスタンブール時事】イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは20日、停戦で合意した。停戦は21日午前2時(日本時間同8時)に発効した。10日夜に始まった交戦では、ガザで高層ビルを含む多くの建物が破壊される一方、イスラエル国内でも大きな被害が出た。合意は双方の無条件での攻撃停止をうたうが、イスラエル首相府は「作戦が今後どうなるかは現場での状況次第」と表明しており、合意を順守できるかが当面の焦点となる。
 イスラエルは今回の軍事作戦でハマスが使う施設や地下トンネルなどを破壊。ネタニヤフ首相は21日、作戦目標を達成して「並外れた」成功を収めたと強調した。エルサレムの「イスラム教聖地の保護」を訴えて戦ったハマスは、パレスチナ人社会での存在感を高めた。それぞれが国民や住民に対して「成果」をアピールできる状況になったことで、停戦が実現した。
 国際社会は軍事衝突に伴う被害の拡大を懸念し、イスラエルとハマスの双方にパイプを持つエジプトなどが主導して停戦を模索。イスラエルの同盟国である米国も、バイデン大統領がネタニヤフ・イスラエル首相との電話会談を重ね、早期の事態沈静化を促していた。エジプトは今後、停戦維持を目的にイスラエルとガザなどに代表団を派遣するという。
 今回の交戦の直接のきっかけは、エルサレム旧市街のイスラム教聖地にある「アルアクサ・モスク」にイスラエルの警官隊が突入して起きた衝突だった。これに猛反発したハマスが10日、エルサレムの方向にロケット弾を発射し、報復としてイスラエル軍がガザにあるハマスの軍事拠点などへ空爆を始めた。11日間にわたる交戦により、ガザでは243人、イスラエル側でも12人が死亡した。
 ハマスは2007年、ガザを武力制圧してパレスチナ自治政府のアッバス議長を支持する勢力を駆逐し、実効支配下に置いた。これ以降、ハマスをテロ組織と見なすイスラエルとの間で衝突が繰り返されている。今回の交戦は、イスラエル軍による地上侵攻などで2200人以上が死亡した14年以来の規模となった。
 ◇米、再関与か「脱中東」か
 中川浩一・三菱総合研究所主席研究員(米国の中東外交)の話 今回のパレスチナ自治区ガザをめぐる軍事衝突は、バイデン米政権が1月の政権発足後、早々に「脱中東」の外交政策を鮮明にし、中東和平問題に重きを置いてこなかったことの「代償」だ。今後、中東和平特使を任命するなどして米国としてパレスチナ問題に再び関与する姿勢を見せるか、それとも背を向け続けるかが注目される。
 親イスラエル政策を進めたトランプ前政権とは対照的に、バイデン政権は和平特使も駐イスラエル大使も置かず、70年以上続く難問であるパレスチナ問題とは距離を取っていた。バイデン大統領が衝突前にイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談したのはわずか1回だったが、11日間の衝突中に行った電話会談は6回に上った。
 ネタニヤフ氏にとっては外交・内政両面で追い風となった。3月の総選挙を受けた組閣作業に失敗したが、ガザへの報復空爆で強力なリーダーシップを発揮。一方、米国に対しては、停戦に応じて同氏と長年の関係を持つバイデン氏のメンツを立てつつ、米国にとってのイスラエルの戦略的重要性を再認識させた。 
〔写真説明〕21日、パレスチナ自治区ガザで、イスラム組織ハマスとイスラエルとの停戦合意を祝うパレスチナ人たち(AFP時事)
〔写真説明〕21日、パレスチナ自治区ガザ市で、自宅の被害状況を確認する人々(AFP時事)
〔写真説明〕21日、パレスチナ自治区ガザ市で、イスラエルの空爆で崩壊した建物の前を通る子供たち(AFP時事)
〔写真説明〕中川浩一三菱総合研究所主席研究員

(ニュース提供元:時事通信社)