【パリ時事】2001年9月11日に起きた米同時テロは、イスラム教徒の割合が西欧では比較的多いフランスでも、イスラム教徒に対する憎悪や拒絶感を強める一因となった。130人が犠牲になった15年のパリ同時多発テロ以降、彼らへの風当たりはますます強まっている。一方で相互理解を深めようとする努力も続く。
 米同時テロ以降、仏国内の公立学校では、イスラム教徒がスカーフや顔全体を覆うブルカやニカブを着用することを相次いで禁止した。表向きは1789年のフランス革命を起源とする政教分離(ライシテ)の原則や女性の権利保護が根拠とされるが、イスラム過激主義に対する警戒感の高まりを反映しているのは明白だった。
 こうした政策が仏国内のイスラム教徒に疎外感を与え、テロに走らせる悪循環を生んでいると指摘する声がある。フランス・イスラム財団のガレブ・ベンシェイク会長は、「(仏国内で)憎悪や拒絶を受けて閉鎖的になり、集団で郊外にとどまるようになったイスラム教徒もいる」と負の連鎖を指摘した。
 欧州では、貧しい移民出身の若者が社会になじめず疎外感を募らせ、テロリストの勧誘を受けて過激化するケースが続出している。01年の米同時テロで航空機を乗っ取り、ニューヨークの世界貿易センターに突っ込んだ主犯格モハメド・アタは1990年代にエジプトからドイツ・ハンブルクに留学した後、過激思想に染まっていったとされている。
 パリ郊外ビュシーサンジョルジュのモスク(イスラム礼拝所)ではこの数年間、非イスラム教徒に向けたレクチャーを毎週実施し、聖典コーランの正しい解釈やアラビア語を教えている。モスクの広報担当者、ヤジド・ユス氏は「イスラム教に対する地域の理解を深め、イスラム教徒とそれ以外の住民のつながりを強めた」と成果を語った。
 ただ、仏国内では現在も移民系の若者らによるテロが続き、その反動で移民排斥を主張する極右政党が支持を集めている。8月にはイスラム教徒の過激化防止を念頭に、宗教団体への監視強化などを定める法律が公布された。ユス氏は「法規制の強化は大半のイスラム系コミュニティーが社会に溶け込んでいる現状にそぐわない。さらなる混乱を生むだけだ」と懸念を示した。 
〔写真説明〕フランスのモスク(イスラム礼拝所)=4月13日、パリ(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)