東京都は5月25日、防災会議(会長・小池百合子知事)を開き、首都直下地震などによる被害想定を10年ぶりに見直し、公表した。都心南部でマグニチュード(M)7.3の直下型地震が発生した場合、都内の死者は最大で約6100人、揺れや火災による建物被害は約19万4400棟に上ると推計した。住宅の耐震化や不燃化の対策が進展し、2012年に公表した従来想定と比べ、被害を3~4割軽減できると見込んだ。
小池知事は会議の席上、「被害想定の結果を踏まえ、都の総力を挙げて防災に取り組む」と強調。都は今後、被害軽減の目標や対策を検討し、地域防災計画を修正する。 23年1月中にも素案を公表、23年度初めに決定する(時事通信)。 

10年間の減災効果を強調

東日本大震災以降の10年間、都では首都直下地震等に備え一層の防災強化を推進してきた。今回の想定結果においても、こうした取組の効果が確実に発現したとして、その減災効果を反映させた。

具体的には、特定緊急輸送道路沿建築物の耐震化率が81.3%から91.6%に上がり、住宅の耐震化率は81.2%から92%にまで高まった。この結果、建物全壊棟数は12万棟から8万棟へ減少。揺れによる死者は5100人から3200人にまで減った。不燃化の取り組みについては、木造住宅密集地域が約1万6000ヘクタールから8万6000ヘクタールに減少し、逆に不燃領域率は58.4%から64%へ増えたことから、焼失棟数は20万棟から12万棟、火災による死者数は4100人から2500人に減った。このほか自助・共助の取り組みの成果も反映させた。こうした取り組みにより、さらに被害を軽減できる点を強調した。

 
■人的被害における旧想定との比較
 

2012年想定
(東京湾北部)

今回想定
(都心南部)
死者数 9641人 6148人
負傷者 14万7611人 9万3435人
避難者 約339万人 約299万人
帰宅困難者 約517万人 453万人

(冬・夕方)

震災関連死や複合災害は含まず

今回の想定では、長引く避難生活で体調を崩して死亡する震災関連死については、死者数に含まれていない。前回調査でも含まれていないが、熊本地震では、280人近くの死者数のうち、8割が災害関連死だったことを踏まえれば、関連死によって死者数が大幅に増える可能性は否定できない。ただし、想定では、地震直後には停電で人工呼吸器などが停止し死亡するおそれがあるほか、数日後からは車中泊によるエコノミークラス症候群などによる死亡が、そして、1か月以上あとには、慣れない環境での心や体の不調による自殺なども想定されるほか、地震後に台風や大雨が発生した場合は、地震により脆弱化した建物が倒壊したり、崩れやすくなっていた斜面が崩壊して、死傷者が発生する場合があると注意している。また、10年前と比べ被害が大きくなるものとしてはオフィスビルやタワーマンションの増加によりエレベーターの停止台数を大幅に増やした。
 

発生後に起こる5つのシナリオ

こうした点も踏まえて、想定では、発生後に起こりうる5つの「シナリオ」を時系列で示した。

インフラ・ライフラインについては、地震直後や翌日は広範囲で停電が発生し、その後も広い地域で計画停電が実施される可能性があるとした。3日目からは徐々に停電が減少。発電所の停止など、電力供給量が不足し、電力需要が抑制されない場合などは、計画停電が継続する可能性があるとした。1カ月で多くの地域で供給が再開する。このほか水道や下水は1か月後にはおおむね復旧するものの、ビルやマンションでは配管修理が完了しないと水道やトイレを利用できない状況が続く。通信も音声通信やパケット通信の利用に支障が出る。輻輳 により 音声通話は つながりにくくなり、メール、SNS等の 大幅な遅配等が発生する。携帯基地局電源の枯渇により、不通エリアが拡大する可能性もある。1週間後は、順次、通信 が回復するものの、通信設備の被害状況によっては、電話やインターネット等通信が長期間に渡り不通となる。道路は、高速道路及び主要一般道において、交通規制が実施され、一般車両の通行が規制。環状七号線の内側方向への流入禁止等の交通規制も実施される。ガソリンスタンドは当面給油不能か長蛇の列ができると想定される、とした。

このほか、応急対策活動、避難所での避難生活、自宅等での避難生活、帰宅困難者を取り巻く環境についてのシナリオが示された。

①インフラ・ライフライン
広範囲で停電、その後も計画停電が継続

②応急対策活動
古いマンションなどで多数の閉じ込め発生。火災も 

③避難所での避難生活
スマフォバッテリー切れ、衛生環境が急激に悪化

④自宅での避難生活
広い地域で計画停電、トイレ利用も不可

⑤帰宅困難者
従業員が出社できない状況が1週間以上継続