日本がウクライナ支援で存在感を発揮できず苦慮している。欧米が戦車などの軍事援助に踏み切る中、武器供与に制約がある日本の支援は限られる。岸田文雄首相は5月に広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向けて国際世論をリードしたいところだが、政府関係者は「今はできる範囲のことをやるのみ」と言葉少なだ。
 松野博一官房長官は2日の会見で、「ウクライナの復旧・復興に貢献していくように、G7議長国としてリーダーシップを発揮する」と強調した。
 1月中旬以降、米国や英国、ドイツが最新鋭戦車の供与を決定。ウクライナのゼレンスキー大統領は地対地ミサイルや戦闘機といったさらなる軍事支援を求めている。
 日本は昨年3月、防衛装備移転三原則の運用指針を見直し、自衛隊の防弾チョッキやヘルメットを提供した。同11月には、ウクライナのような被侵略国への殺傷能力がある武器の移転を認める条件緩和案を与党に提示したが、今春以降に再検討することとなった。
 浜田靖一防衛相は2日の衆院予算委員会で、「国際法違反の侵略を受けている国を支援するために重要だ」と指摘。ただ、公明党内には他国の紛争に巻き込まれるリスクを懸念する声が根強く、与党内の議論は難航も予想される。
 日本は最近も越冬支援として約300台の発電機や8万個超の太陽光照明を提供。カンボジアでの支援実績を生かした地雷対策の協力も始めた。
 がれき処理や生活再建などの復興分野について、首相は「日本独自の知見と強みが生きる」と意気込むが、戦況が不透明で議論を深めにくいのが現状だ。広島サミットでどこまで主導的役割を担えるかは見通せない。 
〔写真説明〕首相官邸に入る岸田文雄首相=2日午前、東京・永田町
〔写真説明〕記者会見する松野博一官房長官=2日午後、首相官邸
〔写真説明〕ドイツ製主力戦車「レオパルト2」=独北西部ミュンスター(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)