13日朝の北朝鮮弾道ミサイル発射を受け、政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)でいったん出した避難指示を訂正した。岸田文雄首相は「国民の安全を最優先するとの観点から発出した」と説明。安全確保を期して迅速性を優先したものの、正確性は担保できず、避難指示への信頼性を損ないかねないジレンマを抱える。
 「わが国領域に落下する可能性がなくなったので、改めて情報提供を行った」。首相は避難指示を約20分後に「訂正」したことについて問われ、こう釈明した。「判断は適切だ」とも強調した。訪問先の大阪市で記者団に語った。
 弾道ミサイルは午前7時22分ごろ、北朝鮮内陸部から「ロフテッド軌道」とみられる高角度で発射され、政府は同55分に避難指示を出した。だが、海上保安庁は午前8時20分になって「落下する可能性がなくなった」と訂正した。
 避難指示は、弾道ミサイルが領土・領海に落下するか、領空を通過する可能性がある場合に発令される。避難指示を出した理由について、松野博一官房長官は記者会見で、ミサイルは探知直後にレーダーから消失したが、限られた情報の中で、北海道周辺に落下する可能性がある航跡をたどることが予測されたためと説明した。
 北朝鮮から発射された場合、日本の領域には早ければ10分以内で到達する。迅速な対応が不可欠だが、今の技術では「スピードを優先すれば正確性が犠牲になり、正確性を優先すれば判断に時間がかかる」(政府関係者)のが実情だ。
 前回発令した昨年11月のケースでは、避難指示を出した時点でミサイルの通過予測時刻を2分過ぎており、「遅過ぎる」「意味がない」と批判を浴びた。このため、内閣官房は昨年末、発令のタイミングを「相当程度確定的」から「一定の蓋然(がいぜん)性が確保された段階」に早めると発表した。
 ただ、不正確な避難指示が続けば、国民が真に受けなくなる恐れもある。立憲民主党の安住淳国対委員長は党会合で「確実性がなくなると『オオカミ少年』、信頼をなくす」と指摘したが、国民の安全確保を最優先する以上、こうした批判も甘んじて受けるしかなさそうだ。 
〔写真説明〕北朝鮮のミサイル発射を受け、首相官邸に入る岸田文雄首相(右)=13日、東京・永田町
〔写真説明〕記者会見する松野博一官房長官=13日、首相官邸

(ニュース提供元:時事通信社)