【ワシントン時事】国際通貨基金(IMF)はワシントンで開かれた春季会合で、世界のサプライチェーン(供給網)が異なる陣営に分かれる「分断の危機」に直面していると繰り返し警鐘を鳴らした。出口の見えない米中の大国間競争や、ロシアによるウクライナ侵攻が「新冷戦」を招きかねないと強い懸念を表明。先進7カ国(G7)の議長国を務める日本は、重い課題を突き付けられている。
 「世界を新たな冷戦に追い込むことなく、供給網の安全性を高めることはできるのか」。IMFのゲオルギエワ専務理事は13日の記者会見で、経済安全保障の観点から「脱中国依存」を進めるG7の戦略を踏まえ、世界的な供給網の再編はインフレに拍車を掛け、「途上国や新興国にも打撃が及ぶ」との認識を示した。
 背景には、信頼できる同盟国や友好国で経済圏をつくる「フレンドショアリング」と呼ばれる米独自の構想がある。米国とハイテク覇権を争う中国も「科学技術の自立自強」を掲げ、西側諸国への依存から脱却を図っている。IMFはこうした供給網の分断が深まれば、世界経済の損失は最大7%に達すると警告を発した。
 G7財務相・中央銀行総裁会議は12日、クリーンエネルギー製品の供給網づくりで協調すると明記した付属文書を発表した。議長を務めた鈴木俊一財務相は記者会見で「供給網の特定国への集中は望ましくない」と説明。太陽光パネルやレアアース(希土類)の世界最大の産地である中国が念頭にあるとみられる。
 世界は1930年代、恐慌をきっかけに保護主義や経済ブロック化に走り、第2次大戦という悲劇を招いた。東欧ブルガリア出身のゲオルギエワ氏は「冷戦が繰り返されるのを見たくない」と語り、供給網の見直しは世界経済への波及効果を見極めた上で、慎重に判断されるべきだと訴えた。 
〔写真説明〕記者会見する国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事=13日、ワシントン(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)