日銀が28日に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中で、新たに示す2025年度の物価上昇率見通しについて、前年度比1%台後半を軸に検討に入ることが17日、分かった。国内経済は既にデフレ的状況を脱しているが、日銀では目標とする2%の物価上昇の定着は慎重に判断すべきだとの見方が強い。賃上げ動向などを見極めた上で最終判断する。
 日銀は展望リポートを3カ月ごとに更新しており、植田和男総裁の下で27、28両日に初めて開く金融政策決定会合で最新の見通しをまとめる。1月の前回リポートでは、23年度の物価見通しは1.6%、24年度は1.8%だった。今回、23年度見通しについては上方修正の是非を議論する見込みだ。
 今回初めて示す25年度見通しについては、1%台後半を軸に正副総裁を含む9人の政策委員が検討を進める。先行きの物価上昇に楽観的な委員が過半を占めれば、見通しが2%台となる可能性も残されている。ただ、欧米の金融不安や世界経済の減速など先行きは不確実で、日銀内では2%台実現に確信を持つには至らないとの見方が多い。
 植田氏は今月10日の就任記者会見で、2%の物価上昇について「簡単な目標ではない。有限の時間内に達成するという強い見通しは現時点で申し上げられない」と語った。
 一方、日銀は金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)として、これまで「新型コロナウイルス感染症の影響を注視」し、企業の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努める方針を示してきた。政府は5月8日にコロナの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同じ「5類」に下げる予定で、日銀は6月の決定会合までに先行き指針の表現変更も議論するとみられる。 

(ニュース提供元:時事通信社)