【台北時事】昨年11月の台湾統一地方選で大敗した与党・民進党が、頼清徳主席(党首)の下で党勢回復の兆しを見せ始めている。3月の立法委員(国会議員)補欠選挙では、最大野党・国民党を下し連敗をストップ。来年1月の総統選に向けて、「党改革」を掲げる頼氏は徐々に態勢を立て直しつつある。
 「われわれは団結し、協力して民主的な台湾を成長させていく」。総統選候補である頼氏は4月30日、中部・台中市で開かれた後援会組織の設立会合で、総統選への決意を語った。米国との連携を強化する蔡英文総統の外交路線の評価は高く、頼氏も中国の習近平政権に厳しい態度で臨んでいる。
 だが、昨年以来、民進党を取り巻く状況は厳しい。統一地方選で選挙前の7ポストを5ポストに減らし、「結党以来最低」と言われる惨敗を喫した。今年1月の立法委員補選でも敗北した。民進党が支持を失ったのは「政治と金」の問題や、候補者の学歴詐称といった不祥事による影響が大きかった。
 1月の補選で敗北した直後、党主席に就任した頼氏は党の刷新に動いた。総統選と同時に行われる次期立法委員選に向けて、疑惑が取り沙汰された党員を候補から外すなど、頼氏の党運営は一定の評価を受けている。民間団体「台湾民意基金会」の世論調査では、頼氏の党改革に「満足」と答えた人が過半数を占め、「不満」の2割を大きく引き離した。
 頼氏は実績も手にした。3月に実施された立法委員補選では、党主席として初めて選挙に臨み、激戦を制した。「党内で指導力を確立した」(台湾メディア)と評価され、民進党関係者は「党内の雰囲気が変わった」と語る。
 ただ、4月の世論調査では、民進党の支持率は28.6%で、国民党が25.9%と迫っている。国民党は統一地方選前は10%台だったが、最近5カ月の平均は23.5%で、支持を広げている。
 有権者の関心は対中政策だけでなく、経済・福祉といった身近な生活に向いている。国民党は、中国との良好な関係をてこに経済協力を拡大すると訴える。これに対し、頼氏は住民が納得する景気浮揚策を打ち出せておらず、総統選の勝利へ具体的な展望を描けているとは言えないのが実情だ。 
〔写真説明〕台湾与党・民進党の頼清徳主席(党首)=4月12日、台北(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)