対話型人工知能(AI)「チャットGPT」に代表される生成AIが急速に進化する中、政府は適正な利活用をにらんだ規制・ルールづくりに乗り出した。AI分野で米国などに後れを取った日本は、野放図な利用に歯止めはかけつつも、技術開発を阻害しないよう政策上のバランスを模索。先端技術をてこに経済成長につなげたい考えだ。
 岸田文雄首相は11日の「AI戦略会議」(座長=松尾豊・東大大学院教授)の初会合で「AIとの向き合い方は、各国とも推進一辺倒、規制一辺倒ではなく、それぞれの事情に応じ、バランスを模索しているところだ」と強調した。
 膨大な学習データを基に自然な文章や画像を生み出す生成AIは、上手に使えば飛躍的な業務効率化につながる。政府は法律や金融、コンテンツ作成などの分野での活用を想定。少子高齢化に伴う人手不足対策にもなるとみている。
 自民党・デジタル社会推進本部は4月、AIを「新たな経済成長の起爆剤」と位置付け、新たな国家戦略を求める提言を策定。AI開発は米国勢が先行するが、同本部の会合に出席した松尾氏は「日本もやり方によっては勝てるチャンスがある」と訴えていた。
 一方、誤った情報を拡散する恐れやAIが扱うデータの著作権、個人情報の扱いなど課題も山積する。漫画家やイラストレーターらでつくる「クリエイターとAIの未来を考える会」は、生成AIが著作権の所有者に無断で画像を収集、複製しているとして法整備を求めている。
 岸田首相は先進7カ国(G7)議長国として、国際的なルール形成を主導したい考え。だが、欧州連合(EU)は法律による厳格な規制を目指し、日米はガイドラインなどによる柔軟な運用を志向しており、足並みがそろっていない。 

(ニュース提供元:時事通信社)