バイデン米大統領は米国の債務不履行(デフォルト)危機という「内憂」を抱えながらも、19日から始まる先進7カ国首脳会議(G7サミット)のため来日した。到着後すぐに日米首脳会談を設定したのは、議長国である日本と足並みをそろえ、中ロへの対応で温度差があるG7を団結させる必要があったからだ。
 「私たちが共に立ち上がれば、世界はより安全になる」。バイデン氏は会談冒頭、岸田文雄首相にこう語り掛けた。
 バイデン氏は野党共和党との債務上限問題を巡る交渉のため、外遊後半に予定していたオセアニア歴訪を取りやめた。米政府関係者は「全行程を中止する可能性もあったが、大統領は来日を重視した」と語る。
 背景にはアジア最大の同盟国・日本を支える狙いがある。戦略国際問題研究所(CSIS)のクリストファー・ジョンストン日本部長は、ロシアのウクライナ侵攻で国際秩序が揺らぐ中、日本が指導力を発揮し、G7の結束を示すことができれば「欧州とアジアは分断できないというメッセージになる」と指摘。さらに「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国に対する求心力にもつながると説明した。
 一方、今回のG7で米国が最重視するテーマが、半導体や重要鉱物などのサプライチェーン(供給網)の再構築。経済安全保障分野の米中覇権争いが激しさを増す中、内政を理由とする米国の不在で議論を停滞させることは避けたかった。
 バイデン氏は19日午前、他の首脳と共に広島の平和記念資料館(原爆資料館)を訪れる。サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は記者団に「歴史と、広島出身の岸田氏への敬意を示すためだ」と説明した。 
〔写真説明〕専用機で米軍岩国基地に到着したバイデン米大統領=18日午後、山口県岩国市

(ニュース提供元:時事通信社)