【シドニー時事】パプアニューギニアが22日、米国と防衛協力協定を締結した。太平洋地域への関与を強化したい米側と、安全保障・経済両面で支援を得たいパプアの思惑が一致した。ただ、パプアを含む島しょ国は総じて、米中の覇権争いに巻き込まれたくないのが本音。一方の陣営に完全に付く形は避け、両側から支援を取り付けようとバランスに腐心している。
 パプアは中国から巨額のインフラ支援を受けており、パプア国内では「中国の資金攻勢は激し過ぎる。もっと米国からも投資や技術が必要だ」(シンクタンク幹部)と慎重な対応を求める声が上がっていた。今回の協定締結に合わせ、パプアは4500万ドル(約62億円)の支援を得た。対米関係の強化は、借金漬けで被援助国への影響力を強める中国の「債務のわな」に陥るのを防ぐことにつながるというわけだ。
 一方、協定によってパプアが米国の軍事拠点となることへの警戒感も広がる。オニール前首相は「マラペ政権はわが国を米中の軍事的争いの嵐の真ん中に置いた。緊張の火に油を注ぐ行為だ」と批判。学生による抗議活動も起きている。
 島しょ国は「すべてを友人に。敵をつくらず」という中立路線を掲げてきた。米国への傾斜が政権のリスクとなる可能性もある。
 島しょ国は、気候変動に伴う海面上昇や災害の多発、広大な海洋の権益保護といった切実な課題を抱え、どこからの支援も歓迎している。実際、パプアのマラペ首相は、中国を含む他国と防衛協力協定を結ぶ可能性を排除していない。
 中国と安保協定を締結したソロモン諸島も2月に米大使館の開設を認めた。島しょ国は米中対立のはざまで、両者と適度な関係を保ちながら、最大限の支援を獲得することを追求している。 
〔写真説明〕22日、ポートモレスビーで、ブリンケン米国務長官との会談に臨むパプアニューギニアのマラペ首相(左)(AFP時事)
〔写真説明〕パプアニューギニアのオニール前首相=2018年11月、ポートモレスビー(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)