岸田文雄首相の遊説先で爆発物が投げ込まれた事件で、警護について検証していた警察庁は1日、「警護計画には、危険物を所持した者を首相に接近させないための実効的な安全対策がなかった」とする報告書をまとめた。政党側に屋内開催を促すなどの対策も盛り込んだ。
 露木康浩長官は同日の定例記者会見で、「主催者と緊密に連携し、警護対象者と聴衆の安全確保に万全を期したい」と話した。谷公一国家公安委員長は「安倍晋三元首相への銃撃と岸田首相の事件を踏まえ、政治家も安全への思いを共有している。警察と主催者が協議して良い方向に行くことを期待する」と述べた。
 報告書によると、演説主催者の自民党和歌山県連は「聴衆は漁協関係者のみ」として、県警が要請した受付設置や金属探知検査を実施しなかった。漁協関係者の判別方法も不十分だったが、県警は実効性を確認しなかった。その結果、木村隆二容疑者(24)=火薬類取締法違反容疑で再逮捕、鑑定留置中=の侵入を許すことになった。
 木村容疑者が下を向いてリュックから取り出す動きをしてから爆発物を投げるまで2、3秒しかなく、侵入後に危険物の投げ込みを防ぐのは困難だったという。
 今後の対策として、首相や閣僚など警護対象者が演説する際、主催者の政党側への働き掛けを強化する。口頭だった要請は文書やメールで具体的に伝える。会場は屋内を優先するよう促し、入場管理の厳格化を求める。手荷物と金属探知検査の実施を事前告知してもらい、悪意ある者の参加をけん制する。警護計画に主催者との協議内容も盛り込み、実効性を警察庁が審査する。 
〔写真説明〕筒状の物体が投げ込まれ、振り返る岸田文雄首相(右から2人目)=4月15日、和歌山市(目撃者提供)
〔写真説明〕記者会見する警察庁の露木康浩長官=1日午後、東京都千代田区
〔写真説明〕記者会見する谷公一国家公安委員長=1日午後、東京都千代田区

(ニュース提供元:時事通信社)