新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行して8日で1カ月となった。行動制限がなくなり、感染対策は個人の判断に委ねられるようになったが、今のところ急激な流行の再拡大は見られない。ただ、感染者の緩やかな増加傾向が続き、高齢者らを対象としたワクチン接種も低調で、厚生労働省は感染拡大に備えて接種を検討するよう呼び掛けている。
 厚労省は全ての患者情報を集める「全数把握」を実施してきたが、5類に移行した5月8日からは全国約5000の医療機関から報告を受ける「定点把握」に変更した。
 集計結果によると、5月22~28日の医療機関1カ所当たりの患者数は3.63人。前週(3.55人)と比べ1.02倍でほぼ横ばいだった。前々週は2.63人で、厚労省の担当者は「4月から緩やかな増加傾向が続いている」と指摘する。
 日本医師会の釜萢敏常任理事は7日の記者会見で、「現状の推移では減少傾向は見られない。獲得した免疫が下がってくるのは確かなので、今後も注意が必要だ」と述べた。
 2023年度のワクチン接種は、5月8日から始まった。重症化リスクの高い高齢者らは年2回打つことができ、5歳以上の追加接種は9月以降に予定されている。しかし、65歳以上の接種率は21.1%(6月6日時点)にとどまり、厚労省の幹部は「これまでの傾向だと夏と冬に流行の波が来る。高齢者らはそれまでにワクチンを打ってほしい」と話した。
 都道府県による死者数の集計は既に終了し、死者数は例年の水準をどれだけ上回ったかを示す「超過死亡」を基に推測し、厚労省が9日から定期的に公表する。新型コロナ対策を助言する同省の専門家組織「アドバイザリーボード」は今月中旬以降に開催され、定点把握に基づく感染者数や超過死亡の報告を踏まえ、5類移行の影響などを分析する。 

(ニュース提供元:時事通信社)