【イスタンブール時事】ウクライナ南部ヘルソン州のダム決壊による洪水は7日、ダム下流のドニエプル川沿岸地域で一段と被害を拡大させた。ウクライナ当局は4万人以上が洪水に巻き込まれる「危険な状況」にあるとみており、多数が死亡した恐れもある。決壊の原因は不明だが、ウクライナとロシアが非難の応酬を繰り広げている。ウクライナが計画する占領地奪還のための反転攻勢への影響も避けられそうにない状況だ。
 ウクライナ当局は7日午前(日本時間同日午後)が「洪水のピーク」と指摘した。国連のグリフィス事務次長(人道問題担当)は6日、洪水によって「多数の人々が家屋、食料、安全な水を失い、深刻で広範な結果をもたらす」と警告する一方、被害の全容は数日たたないと分からないと厳しい認識を示した。
 現地からの報道によると、ウクライナ側が昨年11月に奪還した、川の西岸に位置する州都ヘルソンでは、膝の高さまで水があふれ返った道路を避難する住民の姿が見られた。こうした状況下でも砲撃音がとどろき、人々は戦闘による危険にもさらされている。
 ロシアの占領下にある東岸一帯の状況も深刻だ。ダム付近では行方不明者が出ているもようで、タス通信によると、ロシア軍が地雷を仕掛けた場所も冠水した。洪水が押し寄せた動物園では、飼育されていた動物300匹が全て死んだという。
 洪水の原因について、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアが戦争犯罪を行った」と糾弾。ロシアのプーチン大統領は7日、エルドアン・トルコ大統領との電話会談で、米欧の提案を受けたゼレンスキー政権が「戦闘を激化させる危険な賭けに出た」と主張した。
 ただ、ダムが決壊した6日には現地で大きな爆発が確認されなかったとの情報もある。ロシアの侵攻に伴うウクライナ側との攻防戦が続く中、6日以前の何らかの破壊活動などが一因となりダムが損壊した可能性も否定できない。 
〔写真説明〕7日、ウクライナ南部ヘルソンで、洪水の中、住民たちを救助するウクライナ軍(AFP時事)
〔写真説明〕6日、ウクライナ南部ヘルソンで、ダムの決壊によって冠水した道路を見詰める犬(AFP時事)
〔写真説明〕7日、ウクライナ南部ヘルソンでダム決壊による洪水から避難する住民を救助するウクライナ兵(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)