宮城県栗原市の市立若柳小学校に軽トラックが侵入し児童4人がはねられた事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された男(34)は常時開放されていた通用門から侵入していた。業者などの搬入路として使われており、同小の危機管理マニュアルでも車両の侵入は想定されていなかった。専門家は「着実な門の開閉が大切。自分たちの学校は大丈夫だと過信することなく、安全を担保してほしい」と指摘する。
 事件は6日午後3時ごろに発生。男は運転する軽トラックで同校北側の通用門から侵入し、アスファルト舗装された通路で児童4人をはね、打撲などのけがをさせた。市教育委員会によると、付近では十数人がクラブ活動中だったとみられ、車はエンジン音が小さい惰性走行で児童の後方から接近していた。
 直後に行われた市教委の臨時校長会議後、若柳小の千田知幸校長は「ナイフで傷つけていたら大変なことになっていた」と述べ、通用門の開放に関し「車両の侵入自体がマニュアルになく、地域柄、業者や保護者が通ることを優先していた」と説明した。市教委は車両侵入の対策として、市内の幼稚園や小中学校などに計約130台の鉄パイプ製の防護柵を設置するという。
 学校の安全は、2001年に8人が犠牲となった大阪教育大付属池田小事件で問われた。宅間守元死刑囚=04年執行=は開放された自動車専用門から侵入していたが、法廷で「門が閉まっていたら、乗り越えてまでやっていない」と発言した。
 池田小の事件後に危機管理マニュアルの策定が義務付けられたが、侵入事件はたびたび発生している。今年3月に埼玉県戸田市の中学校で起きた殺人未遂事件で、文部科学省が不審者対策などのマニュアル総点検を求めた。若柳小でも点検は行われたが、これまで車両侵入は想定されておらず、通用門は学校関係者が利用するとして見直しは行われなかった。
 大阪教育大の藤田大輔教授(安全教育学)は「学校安全は過去にできなかったことを教訓としてどう受け止めていくかが大切だ」と指摘。「地域から不便さの指摘があっても安全確保のために門を閉じる。教職員が全てやるのではなく保護者や地域の協力を得て安全を高めることが求められる」と話した。 
〔写真説明〕軽トラックが侵入した若柳小学校の通用門=7日午後、宮城県栗原市

(ニュース提供元:時事通信社)