【ワシントン時事】新型コロナウイルス禍を機に、世界各地で在宅勤務が広がっている。オフィスへの出勤を併せた「ハイブリッド」な働き方も定着しつつあり、大都市ではオフィスや小売り向けスペースの需要減少が見込まれる。特に米欧の大都市へのインパクトが著しいが、東京も影響を免れない。中心部の空洞化を防ぐため、教育・娯楽施設などへの転換が必要となりそうだ。
 マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)は7月に公表したリポートで、大都市のオフィス用スペースの需要が2030年までに19年から13%減、小売り用が9%減少すると予測した。働き方の変化やネットショッピングの普及が背景という。オフィススペース価格に関しては、30年までに総額8000億ドル(約116兆円)が失われる恐れがあるとの試算も示した。
 中でもニューヨークはオフィス用で16%減、ロンドンは小売り用で22%の大幅減が見込まれる。一方、東京はオフィスが9%減、小売りが2%減と、小幅にとどまるとみられる。
 MGIのディレクター、ジョナサン・ウーツェル氏は、東京では米欧の大都市と比べて郊外への移転が進まない理由として、公共交通機関の充実に加え、中心部が金融といった特定業種に集中せず、さまざまな事業や目的で使われていることを挙げた。ただ、東京でも従業員のオフィス出勤日数は22年秋時点で週当たり3.4日にとどまり、ハイブリッド勤務の流れがうかがえる。
 大都市の空洞化を阻止するため、オフィスを住居に転換する可能性について、ウーツェル氏は「オフィスビルは住居目的で造られておらず、難しい」と指摘。教育や文化、娯楽向けなど建物の用途の多様化を図るため、住民ら関係者を結びつける「リーダーシップが求められる」と話した。 
〔写真説明〕米国の大都市中心部では、オフィスビルの空きスペースが目立っている=10日、ワシントン市内

(ニュース提供元:時事通信社)