2023/09/16
防災・危機管理ニュース
JFEスチールは16日、東日本製鉄所京浜地区(川崎市)で稼働する最後の高炉を休止した。国内鉄鋼需要の縮小や中国製品に押され、前身の日本鋼管時代から「100年の歴史」(担当者)を持つ川崎の高炉の火が消えた。跡地には燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さない水素の拠点を整備。脱炭素を象徴する動きと言える。
人口減少による国内の鉄鋼需要減少で、鉄鋼業界は過剰生産体制の解消が課題。JFEは今回の高炉休止を京浜地区の「構造改革」(寺畑雅史JFEホールディングス副社長)と位置付け、2024年度までに約450億円の固定費削減効果を見込む。
跡地では、鉄鉱石や石炭を受け入れるヤードを海外などからの水素受け入れ拠点に再整備。川崎市などと連携し、次世代の都市づくりを進める。京浜地区の古米孝行所長は「100年以上受け継いできた高炉の火が消えることは残念だが、新しい都市型製鉄所を目指していく」とのコメントを発表した。
西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)など残る高炉では、稼働率を上げ、汎用(はんよう)品から高付加価値品へのシフトで採算性向上を図る。
京浜地区に限らず、国内の高炉は脱炭素化への対応からも休止が進む。高炉は、石炭を原料とするコークスを鉄鉱石と一緒に燃やし、純度の高い鉄を取り出す設備で、多くのCO2を排出する。このため鉄鋼大手は、排出量が4分の1程度で済む電炉への転換を進める。
日本製鉄は、九州製鉄所八幡地区(北九州市)と瀬戸内製鉄所広畑地区(兵庫県姫路市)で、大型電炉の導入に向けた検討を始めた。JFEも倉敷地区の高炉1基を電炉に転換する方針だ。
鉄鋼業の脱炭素化には技術開発と巨額の設備投資が必要で、高炉には「高品質の鉄を大量に安く作ることができる」(鉄鋼大手幹部)という利点もある。鉄鋼業界は、コークスの代わりに水素を使って製鉄する「水素還元製鉄」など、高炉の脱炭素化に向けた革新的技術の開発を急いでいる。
〔写真説明〕JFEスチール東日本製鉄所京浜地区の高炉=7日、川崎市
(ニュース提供元:時事通信社)

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