政府は6日まとめた物流の緊急対策パッケージで、船舶や鉄道の輸送量を約10年で倍増させる目標を打ち出した。運転手不足が懸念されるトラックから船や鉄道への転換を促す「モーダルシフト」を加速させ、「2024年問題」の解消を図る。ただ、配送時間の遅れや天候リスクなど課題も多く、懸念が払拭されるかは不透明だ。
 国土交通省によると、20年度の貨物輸送量全体に占める割合は、船が1.3%(約5000万トン)、鉄道が0.4%(約1800万トン)にとどまる。対策では、大型トラックと同等の積載量のコンテナ導入や、貨物駅や港での積み替え場所の整備費用を支援する。
 「24年問題」では、長距離輸送を担うトラック運転手の拘束時間の長さへの対応がカギを握る。船や鉄道輸送に移行すれば、貨物駅や港までの走行で済み、拘束時間の短縮が可能。船内での移動時間を休憩に充てることもできる。
 需要拡大をにらみ、船や鉄道会社はすでに対応を進めている。商船三井さんふらわあ(東京)は近年、トラック積載台数などを増やした新造船を相次いで投入。担当者は「十分にモーダルシフトを受け入れる態勢はできている」と自信を見せる。
 JR貨物は、トラックから鉄道用コンテナに荷物を移す「積替(つみかえ)ステーション」の主要各駅への整備を急ぐ。また、JR東日本は21年に新幹線を使った食品などの配送サービスを開始。将来的に輸送量を大幅に増やすことを目指している。
 ただ、船や鉄道の場合、積み替え作業などで輸送時間は一般的に長くなりがちで、悪天候や災害時の運休リスクも相対的に高い。物流業界からは「荷主が(デメリットを)どこまで受け入れるかだ」(業界関係者)との声が上がる。政府は荷主企業にも、余裕を持った納期設定などを求める考えだ。 
〔写真説明〕商船三井さんふらわあが運航する貨物船「すおう」(同社提供)
〔写真説明〕JR東日本の新幹線による大量輸送サービスの実証実験(同社提供)

(ニュース提供元:時事通信社)