国立がん研究センター東病院の汚職事件では、医療機器の使用感などを確かめる「市販後調査」を装い現金が授受された。収賄容疑で逮捕された橋本裕輔容疑者(47)は、正当な調査を装うために兼業届を提出し、病院はこれを十分に審査しないまま、承認していたとされる。病院側は「チェック体制が不十分だった」として、外部の有識者を招き、今後、再発防止策を検討する。
 病院担当者によると、同センターでは市販後調査を受託研究と位置づけ、企業と病院の間で契約を結ぶと規定。調査に協力した報酬は病院の研究収入となり、医師個人には払われない仕組みとなっている。
 しかし、橋本容疑者は2019年4月、贈賄側の医療機器メーカー「ゼオンメディカル」と市販後調査の契約を結んだ際、報酬は自らに支払われるという内容の兼業届を病院側に提出。調査実態はないのに、ゼオン社製の医療機器「ステント」1本を使うごとに同社から1万円を受け取ったとして逮捕された。
 担当者は、兼業届を承認した当時の手続きについて、「チェック体制が不十分だった。病院側にも(癒着の)責任はある」と指摘。「調査の兼業申請は想定外だった」とも話した。
 同センターでは昨年10月、傘下の中央病院で、放射線技術部長を巡る汚職が神奈川県警に摘発されている。収賄事件が相次いだことに関し、「コンプライアンス(法令順守)やガバナンス(統治)、組織風土等に問題があった」としており、年度内に外部の有識者を交え、再発防止に向けた改善・改革案を取りまとめて公表する方針だ。 

(ニュース提供元:時事通信社)