文京区湯島の8町会が連携

東京都文京区で12月12日、地元8町会が参加する防災訓練が行われた。主催したのは、文京区湯島地区にある新花会、三組弥生会、三組町会の3町会でつくるSYM(シム)三町会災害連合会(会長:髙山宗久氏)。当日は、大規模な地震発生を想定し、災害対策本部の立ち上げと、無線を使った被害状況の把握と情報共有、被災者や帰宅困難者の避難誘導などを模擬的に行った。

 

2メートル四方の大きな地図を使って、被害状況を把握

■マグニチュード7.3首都直下を想定
12日土曜日の朝9時、文京区湯島にある夏目製作所の2階に約40人の地元住民が集まった。

室内には、ビール瓶の空きケースを土台に、合板に張り付けられた2メートル四方の大きな地図が置かれ、その横に非常用発電機や照明がセッティングされている。窓際には横長のテーブルがあり、その上に無線の受信機やタブレット端末がある――。ここは、SYM三町会災害連合会の災害対策本部が設置される場所だ。

今回の訓練は、平日の午後3時に、マグニチュード7.3の首都直下地震が発生し、すべてのライフラインが麻痺し全公共交通機関が停止したことを想定して行われた。

SYM災害対策本部では、無線機を通信手段として、各町会の対策本部や事業所の担当者と実際の連絡を取り合いながら、地域内の被災状況を把握し、被災者を避難所や医療機関へ避難誘導するための指示を出していった。各町会・各事業所の連携と、最低限の秩序を維持することが今回の訓練の目的だ。文京区の職員や社会福祉協議会のスタッフも訓練に参加した。

 

■大地図と対応表で情報共有
「こちら、SYM本部です。各町会、および事業所の無線管理者に通達します。15時に震度6強の地震が発生しました。各町会は住民を集め、町会本部を立ち上げてください。各町会は本部を立ち上げ次第、連絡ください。以上」。

訓練のスタートとともに、対策本部長が、無線での指示を開始した。
「三組町会です。町会本部を立ち上げました。現時点での被害状況は、倒壊家屋3、半壊2、いずれも木造住宅です。現在室内に残留者がいるか確認中です。負傷者数など未確認です」。町会本部からの連絡が入ると、「詳しい住所を教えてください」と、SYM災害対策本部長が応じた。「倒壊家屋は2-22、半壊は3-18です」と、再び状況が報告されると、本部にいる女性スタッフが、ホワイトボードに張り出された「災害対応表」に、報告された内容を書き込んでいった。同時に、2メートル四方の地図上には、「木造倒壊」「木造半壊」と書かれた付箋の駒が置かれた。

「了解です。新しい情報が入り次第、連絡ください。なお、三組町会は東都病院に、軽傷以外の負傷者のトリアージをお願いしてください。○○会社のショールーム1階を負傷者の応急救護所としての使用許可をもらいましたので救護所の設置もお願いします」(対策本部長)。

その後も、各町会から状況が次々と報告された。
中には「建設工事中のクレーンが倒れ、○○通りは通行できません」という想定が難しい事態も含まれていた。
こうした無線でのやりとりは、約1時間にわたって行われた。訓練の最後には、倒壊・半倒壊の家屋数、道路状況、けが人、避難者、帰宅困難者、対応状況などが本部長より報告された。

 

被害状況を収集しながら指示を出す対策本部長

■住民自らシナリオ設定
訓練のシナリオは、検討会や打ち合わせを繰り返しながら、連合会の役員らが中心となり考え出したものだ。実際にスタッフが町中を歩きながら通信をしているため、途中で無線が途切れたり、通じなくなることも何度かあった。

訓練後の反省会では、「無線での通信には“訓練です”とその都度付け加えた方がいい」「聞きにくい場合と聞きやすい場合がある。少し口から離して話したほうが聞きやすい」「誰から誰に話しているのか途中途中で確認してほしい」などの意見が出された。「無線機の充電は常時行っていたほうがいいのか、それとも充電しきったら電源を外しておいた方がいいのか」などの質問も出された。

同地区の防災活動を支援している防災都市計画研究所代表取締役の吉川忠寛氏は「無線の感度やつながり具合を実際に体験できたことは大きな成

被害状況と対応状況はホワイトボードに張り出された表に書き込まれていった

果だ。今回はシナリオづくりに時間をかけてきたが、本番で“認知症の人で家から出られない人がいる”など、シナリオにないことをアドリブとして入れるシーンもあり、とてもレベルの高いものとなった。一方で、火災が発生して鎮火したという想定もがあったが、本当に消火できるかは分からない。今後、少しずつレベルアップをしてハードルを高めていくことも大切」と評価した。

 

■10年にわたる防災活動
SYM三町会災害連合会は、2007年に地元3町会で立ち上げた自主防災組織だ。それ以前も個々の町会では独自に防災訓練などを行ってきたが、「顔もわからない者同士が被災時に連携して助け合うことは不可能」との理由で、隣接する3つの町会が1つとなって日常的に防災に取り組むことになった。

連合会の発足後は、避難所の開設・運営訓練や消防・救出訓練、帰宅困難者対策訓練、要援護者の避難支援訓練など大規模な訓練を定期的に行うとともに、防災マニュアルの策定や、区や事業所との連携なども進め、2012年には、第1回東京防災隣組の認定も受けている。

今回の訓練では、隣接する天梅会と天神下四町会も加えた8町会による初の防災訓練となった。防災都市計画研究所の吉川氏によると、「この地域の避難場所になる小学校では、被災時には16町会からの避難者を受け入れなくてはならない。こうした中、SYMのような中核となる防災組織があることは地域全体にとってとても意義のあること」と話している。
同連合会は、今年度、内閣府から地区防災計画(※)のモデル地区に選定されている。

訓練後の反省会

※地区防災計画:従来の防災計画としては国レベルの総合的かつ長期的な計画である防災基本計画と、地方レベルの都道府県および市町村の地域防災計画があった。しかし、東日本大震災において、自助、共助および公助があわさって初めて大規模広域災害後の災害対策がうまく働くことが強く認識されたことから、平成25年の災害対策基本法では、地域コミュニティにおける共助による防災活動の推進の観点から、市町村内の一定の地区の居住者及び事業者(地区居住者等)が行う自発的な防災活動に関する「地区防災計画制度」が新たに創設された。市町村の防災会議に提案し、受け入れられると地域防災計画の中に位置づけられる提案制度を有している。

 

防災都市計画研究所代表取締役の吉川忠寛氏