RICONスペシャル・カンファレンス
本誌がセミナー企画協力

 

10月17∼19日の3日間にわたって、東京ビッグサイトで行われた国内最大の危機管理のイベントである危機管理産業展(RISCON TOKYO)2012では、本誌リスク対策.com企画協力の「BCPへの投資と企業の新たな成長モデル」と題したセミナーが開催された。BCPの成熟度が高いとされる外資系金融機関のバークレイズと、これまで国内で先駆的にBCPに取り組んできた半導体製造装置メーカーの㈱ディスコ、物流企業の川崎陸送㈱に加え、主に中小企業へのBCPを推進してきた専門家が、経営戦略としてのBCPの構築方法や、外部から評価される仕組みについて意見を交わした。 

バークレイズバイスプレジデントの佐柳恭威氏は、首都直下地震などの大規模災害時における事業継続の実現のためには、①代替オフィス、②人的リソース、③移動手段の3つの確保が重要とした。具体的に、同社が入居する六本木ヒルズは、地下に都市ガスの発電施設を持ち、災害時でも電力が途絶えることがないこと、仮に六本木ヒルズが使えない場合でも代替オフィス・データセンターを確保していること、災害発生後に公共交通機関が混乱しても速やかに移動ができるようにオフィス近くの倉庫に約50台の自転車を完備していること、万が一の非常時に備えヘリコプターの優先利用契約を結んでいることなどを紹介した。

ディスコBCM推進チームリーダーの渋谷真弘氏は、有効性の高いBCPを実現するためには平時からの取り組みが重要とし、同社の事業継続マネジメントシステム(BCMS)について発表した。同社は、今年5月にBCMSの国際規格であるISO22301の認証を国内で一早く取得している。渋谷氏は、建物の免震化やサーバーの2重化、製造部品の在庫備蓄などのハード対策に加え、深刻な被害が起こる可能性が低い震度5弱程度の地震でも安否確認を行うなど、大規模災害が起きた時に迅速に対応できるように、日頃からの業務にできるだけ災害対策を組み込むなどソフト面にも力を入れていることを強調した。 

川崎陸送(株)代表取締役社長の樋口恵一氏は、製造業をはじめとする多くの産業の供給の担い手である物流業は、非常時には絶対に事業を止めることができないため、BCPは、物流業の最重要サービスの1つで、経営に直結する問題だとした。ツイッターによる従業員間の連絡や、外国製の自家発電装置の購入、トラックのバッテリーを使った蓄電システム、さらには日頃からの訓練や従業員を交えたブレインストームなど、中小企業ならではのコストを抑えた最大限のBCP対策の成果を得る工夫について話した。 

各社の事例を踏まえ、眞崎リスクマネジメント研究所の眞崎達二朗氏は、こうしたBCPへの取り組みが銀行や保険会社などの金融機関から評価される可能性について解説。日本政策投資銀行が、防災や事業継続の取り組みを独自の評価制度に従って評価するBCM格付け融資制度や、民間の保険会社における、BCP策定企業に対しての利益保険加入の割引制度などを紹介したが、「一般の企業、特に中小企業に対して、こうした評価制度を広げていくことは無理」と指摘した。その上で眞崎氏は、1970年代に品質マネジメントシステムが日本の企業全体に浸透したことについて言及。「当時は、欧米に遅れているという危機感のもと、企業の経営者が必死に勉強し、欧米のマネジメントシステムをもとに日本独自の品質管理手法を考えだした。今の経営者は真剣さが足りないことが、BCPがいつまでも普及しない最大の理由であると思う」と語った。