TIS株式会社とリスク対策.comは5月20日、東京都内で事業継続実践セミナー「危機対応能力を高める状況判断と訓練手法」を開催した。鈴与株式会社危機管理室室長の後藤大輔氏は的確な意思決定を導く状況判断のポイント、ニュートン・コンサルティング株式会社シニアコンサルタントの久野陽一郎氏は情報収集力と意思決定力を高める効果的な訓練、TIS株式会社公共ソリューション部部長の林伸哉氏は情報の収集・共有をサポートする情報インフラについて、それぞれ講演した。

冒頭、あいさつに立ったTIS株式会社公共事業部の山田佳邦部長は、東日本大震災を振り返り、実際の危機に直面したときの状況判断の困難さを強調。「適切な状況判断と備えがいかに不足していたかを痛感した。より高いレベルの危機管理が求められている」と参加者に訴えた。

危機対応における状況判断の考え方 
東日本大震災発生時、海上自衛隊で指揮官として勤務していた後藤氏は、危機発生時における状況判断には目的と任務の明確化が欠かせないと指摘し、次のように説明した。 

「海上自衛隊でも東日本大震災の発生直後に持っていた情報は一般的なマスメディアを通した情報だけだったが、そんな状況下でも、素早く出港し災害派遣に備えられたのは、全ての指揮官が目的と任務をはっきりと認識し、その中で自分ができること、やらなければならないことを適切に判断したためだ。企業においても発災直後の情報収集は重要なポイントではあるが、目的と任務が明確になっていないと、入手した情報を正しく使用することができず、状況判断を誤り、結果として間違った行動をとってしまう可能性がある。目的と任務をはっきりさせ、入手した情報で正しい判断ができれば的確な対策がとれる。的確な対策とは、自分の任務を全うするため最も良いと考える行動であり、それぞれが自分の任務を遂行すれば最終的に組織として目的を達成できる。重要なことは任務を具体的に指示されてもされなくても、目的達成のために何をすべきかを明確にして望むことである。状況判断は、事前にある程度時間をかけて情報を集め検討可能な分析的意思決定と、短時間で方針を決定しなければならない直感的意思決定の2種類に分類できる。分析的意思決定として事前に計画を準備し、ある程度の方針を決めておき、非常時にその計画と実際に得られた情報をもとに、直観的意思決定として瞬時に判断をくだせるよう普段から訓練を重ねておくことも重要だ」。

 

危機対応能力を高める訓練の重要性 
久野氏は、情報収集力と意思決定力を高める訓練として災害図上訓練(DIG)と机上演習訓練それぞれの特徴を解説した。
 
「災害時の問題は、災害対策本部に情報が集約されず、関連する部門に情報が伝わらない点。DIGには参加者自身が被害をイメージでき、災害を自分たちの問題として捉えられる利点がある。それは地図上に事業所や拠点などをマークし、与えられた想定をもとに参加者が具体的な被害を考えるためだ。例えば倉庫内のラックが倒れて在庫を10%失う、幹線道路が寸断されるなど数々の被害を参加者が提示する。そこから部品の調達に動き、物流会社に迂回ルートを知らせるなどの対策を考える。そして、その対策を実施するために、どんな情報を収集し、それを誰に共有すべきかの検討に至ることができる。一方、机上訓練は経営資源の稼働状況を把握し、いつどこでどれほど資源を投入するのか決断を迫る訓練である。情報の取扱い、連携と意思決定が結果を左右する。経営資源に見立てた駒を机上で動かし、リアルタイムの変化を追って対策を実行する。進行役が与える被害情報や社内外の変化にもとづいて初動対応チームなどの現場が対応を検討し、対策本部に報告する。本部では情報を集約して意思決定を行い、指示を出す。この指示を受けた現場が動き出すと、また状況が変化し対応が求められる。このように新たなサイクルを回して訓練は進む。机上訓練では盤上で経営資源が移動するため何が起きているか、どういう状況なのか一目で把握できる。ある企業の訓練では状況がどんどん進行するため、対策本部で資源を追加投入した結果現場の状況が変化したが、その内容が対策本部へ上がってこず、次の打ち手が遅れ、さらに実態にそぐわないなどの情報共有に起因する問題点が明らかになった。効果的な情報の集約と伝達、的確な状況判断と正しい意思決定に必須なのはシナリオや目標を変えた繰り返しの訓練。回数を重ねてはじめて有事で機能する」。

 

BCPの実行力を高める情報共有基盤 
林氏は、的確な状況判断をサポートする情報インフラの必要性を指摘。解決策として、安否確認から掲示版形式による情報収集と共有や地図情報までを整理し、一括管理できるTISの危機管理情報共有システム「Bousaiz」の活用を提案した。 

「発災直後から社員の安否確認からはじまり、自社の被災状況の確認、取引先や関連会社の状況確認と復旧要員の確保など社内ではさまざまな情報が飛び交う。従業員の安否状況がつかめても、業務の連絡や振り分けなど事業継続のステップに進むには各部門との連携が必要になる。情報の連携と集約において問題となるのは情報の整理と共有。災害対策本部や各拠点で一般的に利用されているホワイトボードによる情報管理は、テレビ、電話、インターネットやメールなどあらゆる手段で集めた情報が時系列で書き込まれ、多様な情報の単純な羅列になりやすい。集めた情報は、本部に集約されるが、他拠点には情報が共有されず、対策が遅れ多大な時間とコストを浪費する。道路の寸断など地理情報の集約に使われる白地図もホワイトボードに書き込んだ情報との重複がみられ視認性が低下し、また情報の更新が後手にまわりがち。当社の危機管理情報共有システム「Bousaiz」は、グループ設定や情報の仕分け機能を有し、WEBベースのシステムであるため状況の変化に応じて関係者間でリアルタイムな情報の更新と共有が可能になり、情報が効率的に整理され、把握しやすい。さまざまな情報を集約・共有でき、初動対応時に適切な判断が可能になる」と強調した。