私たちの周りにあるセキュリティ「モノ」についてお話をしていますが、今月は番外編「航空会社の方々へ」です。

乗務員による飲酒問題

昨年から今年にかけて航空機の安全と安心を守るはずの操縦士やキャビンアテンダント(CA)による飲酒が問題になっています。日本の代表的な翼であるJALとANAだけではなく、スカイマークでも機長からアルコールが検出され札幌発の便が遅延しました。過剰労働、ストレス、寝つけないなど様々な理由が言われていますが、どのような理由があっても酒の臭いをさせて乗務することは決して許されません。航空会社を監督する立場の国土交通省航空局は飲酒事案が発覚した各航空会社に対し、厳重注意や業務改善勧告を出しました。どの航空会社も今後はより厳格な乗務前の飲酒検査を実施し、酒に関するスタッフ教育を行うと約束しました。

航空管制官も実施対象に

国土交通省は航空会社だけではなく、航空管制官についても業務前の飲酒検査の導入を検討しています。国家公務員である航空管制官は、レーダーや無線を通じて航空機に離陸・着陸の指示をします。羽田空港では1時間に最大約80回、航空機の離発着があり、すべては航空管制官の指示次第、つまり上空と地上に列を作らせ待機させ、1機ずつ安全に離陸させ着陸させるためには彼らの存在が不可欠なのです。航空機の安全運航を担うという大きな責任を持つのですから当然だと思うのですが、一方で今まで航空管制官については飲酒に関する明確なルールがなかったという点には驚きました。

羽田のような過密空港では、緊急事態がひとつ発生すると上空や地上で待機している航空機へも莫大な影響がもたらされます。航空管制官には瞬時の判断が要求され、それを誤ると甚大な被害につながります。重責を担う管制官がアルコールを飲んでいたら・・・・。個人差はありますが、たった1杯のビールでも判断力や反応力が通常とは異なります。酒で鈍った判断力のせいで航空機事故が起きることもありえるのです。アルコールに関するしっかりとしたルール作りをこれからするというのは・・・国土交通省も遅すぎですよね。

信頼関係の大切さ

今回の航空会社の飲酒事案をうけて、航空業界の飲酒検査が厳しくなるでしょう。JALもANAも信頼を回復するために努力するといった内容のプレスリリースを出しています。信頼回復の相手は乗客だけではありません。保安検査員の信頼を回復する努力もしてほしいと思います。保安検査場では日々お客様に怒鳴られながらも、保安検査員が丁寧に検査を行っています。自分たちがしっかりと検査をして危険物を取り除けば、機長以下の乗員がその安心を担保に安全にお客様を目的地まで運んでくれるという、航空機の安全運航のための信頼関係があるからです。飲酒により、航空会社は「お客様の信頼を裏切り…」というお詫びを出しましたが、保安検査員からの信頼を裏切ったということにも気づいてください。

お客様を目的地まで安全に送り届けるために航空セキュリティは存在しますが、そこに関わる人間が1人でも不安全行動をとれば、セキュリティ体制は簡単に崩れてしまいます。今回の飲酒問題は今まで日本が丁寧に培ってきた航空セキュリティのもろさを浮き彫りにしました。航空機の乗員たちが、人を乗せてその命を預かっているという責任の重さを背負えないと感じるのであれば、酒に頼るのではなく、乗務を降りるという勇気をもってください。航空会社はもう二度と、お客様とのそして保安検査員たちとの信頼関係を崩すようなことはしないでほしいと思います。

この記事が出た後に、まさか保安検査員の飲酒問題などが出ませんように。