日本自動車タイヤ協会による冬用タイヤ着用義務を周知するポスター(出典:http://www.jatma.or.jp/tyre_psd/othernews04_1809.pdf

暖冬少雪の今年、筆者の住む新潟長岡は例年1mを越える雪の壁に覆われるのが、今年はこれまで10cm程度。あとひと月この気候が続けば春の便りも近そうである。

2月と言えば、太平洋側で雪が降る季節。南岸低気圧による関東甲信豪雪で軒並み50cmもの雪が降ったのは5年前の2014年2月14~16日のことであった。交通まひで生活に支障をきたし、経済的な損失だけでなく人命も失われた。豪雪地に住む者として、準備と対応を適切にすれば被害が抑えられ、復旧も早まることを指摘したい。

1.冬が来る前に

■スタッドレスタイヤに履き替える
車の冬対策はこれにつきる。「関東は雪は降らないから」というかもしれない。だが雪が降らなくても、前日の雨が夜晴れて凍結することによるスリップ事故が多発。歩行者がひかれて亡くなっている。また、履いていれば運転中の突然の降雪でも安全な場所まで走ることができる。降雪対策として年間通じてオールシーズンタイヤを履くのも一つの選択肢である。凍結路面ではサマータイヤと変わらない性能なのは残念だが、非積雪地域では有効だと思う。

■日本自動車タイヤ協会 冬道を走るならノーマルタイヤNo!!
http://www.jatma.or.jp/tyre_psd/othernews04_1809.pdf


走れても止まれない、雪道のノーマルタイヤ(JAFユーザーテスト、出典:YouTube)


雪道での登坂テスト(JAFユーザーテスト、出典:YouTube)

■雪下ろしワイパーやスコップの準備を 
雪国のドライバーは写真で示すような冬装備をたいがい持っている。スコップ、脱出用マット、雪下ろしワイパーは持っておくことを勧める。

 

■長靴を用意する 
ただのゴム底では滑りやすい。底に滑り止めが付いたものを勧める(写真は筆者が使用している樹脂スパイクタイプ)。

 

2.雪が降る前に

■天気予報をみる
南岸低気圧で雪が降るか降らないか、低気圧の位置や地表近くのわずかな気温の変化によって雨になったり雪になるので、「雪」やその量を予測するのは気象予報士泣かせのようである。ただし、南岸低気圧が来ることは関東豪雪には必須であるのは確かである。マスメディアで流される天気予報の他に、気象庁の発表する数値予測を分かり易く説明したサイトが参考になる。

■気象予報士Kasayanのお天気放談
http://blog.livedoor.jp/kasayan77/

■週間寒気予想
http://www.ystenki.jp/kanki.html

3.雪が降ったら

■休む 
鉄道も道路も非積雪地域では雪に脆弱である。豪雪地の様な備えはコストが掛かるため、滅多に雪の降らない地域で備えが十分で無いのはやむを得ない。危急の要件が無ければ、自分の判断で休むのも大事だろう。

■車は運転しない 
スタッドレスタイヤ履き替えを勧めるのと矛盾するようだが、除雪体制の無いに等しい関東地方で5年前の様な豪雪になれば、どんな車でも走行困難である。また、少なくてもほとんどの車が現状ではノーマルタイヤ。沖縄県を除く都道府県では、条例で降雪時に滑り止めを付ける(記述の詳細は少しずつことなる)ことを義務づけているが、守られていないのが現状である。雪道運転にも慣れておらず、チェーンを付けたタクシーが坂道で空転しているのを見たことが昔ある。救急車、消防車といった命と財産を守る車両を最優先して、運転を控えてほしい。

■雪を落としてから運転を! 
やむをえず車を運転する場合は、雪下ろしワイパーで先に雪下ろしをすること。これはスキー場に来るドライバーも守ってほしい。大きな雪の塊が落ちると後続車に危険である。実際、教え子で高速道路で突然の雪の塊をよけきれずぶつかって車が廃車になったことがあった。車だけならよいが人命に関わる恐れがある事故だ。下ろさず走ってブレーキを掛けると落ちた雪でフロントガラスが覆われて前が見えなくなることがあるのでドライバー自身にとっても危険だ。

 

■カーポートの下には入らない! 
南岸低気圧の雪は湿って重い。雪の上から雨が降ってさらに重くなることもよくある。非降雪地域で使われているL字型の片持ち屋根のカーポートは雪の重みに弱い。愛車を守りたいのはよく分かるが。決して降雪後にカーポートの下に入ってはならない。まずは命である。

■落雪に注意! 
一気に50cm積もった後に気温が上がれば、雪の塊が屋根を滑って落ちてくる。筆者はこれで自分の車の屋根をつぶしたことがある。凸に盛り上がっているはずの車の天井が朝行ってみたら凹んでいて驚いた。そういえば、夜中に「ドスン、ドスン」と雪の塊が落ちる音が繰り返ししていたのだった。その場に居合わせたら首が折れて命を落としただろう。雪国では、屋根のひさしに近寄らないのは常識。危険箇所に赤いパイロンを置くこともよくある。一気の気温上昇、あるいは雪の上から雨が降った時は特に注意が必要だ。

 
 

■通れる通れない情報はSNSが有用 
雪道の路面状態はほんの10m、20mで大きく変わる。「ここは通れる」「ここはガタガタで要注意」といった極めてローカルな情報は、そこで生活している市民が一番持っている。マスメディアや行政が流すにはミクロ過ぎて、さらに雪解けや車の通行によって1時間で様子が変わることもよくある。そんな時一番役に立つのがSNS。2018年の福井豪雪ではフェイスブックの福井災害情報(現在はグループ内公開、承認制)、新潟県三条市の豪雪ではツイッターのケンオー・ドットコム(@kenohcom)が、こうした情報のハブの役割を果たした。

4.雪害からの復旧

■写真を撮る 
水害や地震と同様、雪害も写真を撮っておくことが大事である。

■領収書・レシートを保管する 
修理・復旧に要した費用を分かるようにしておくこと。業者に除雪を依頼した場合には要した費用がわかること。

■車の落雪被害は車両保険 
自動車保険の車両保険に加入していれば、落雪による損壊にも補償される。被害があったら保険会社に連絡すること。

例)ソニー損保【保険金は支払われる?】大雪による損害(カーポートの倒壊による損害など)
https://with.sonysonpo.co.jp/wisdom/auto/detail_166186.html

■家屋は火災保険・火災共済
雪による家屋の損壊では、火災保険や火災共済に加入してれば補償される。被害があったら保険会社に連絡すること。補償の範囲は契約内容による(母屋のみか、カーポートを含むか、など)。

例)損保ジャパン日本興亜 雪災・ひょう災による損害
https://www.sjnk.co.jp/knowledge/basic/guide/contents2/

■農業被害
ビニールハウスの被害は農業共済に加入していれば補償される。また、作物についても同様である。大きな雪害については国等による支援制度が設けられる。

全国農業共済協会
http://nosai.or.jp/

■被災証明書・り災証明書
家屋等の被害で保険や共済の手続きをする時に、被災したことを公的に証明する「被災証明書」が必要な場合がある。お住まいの市町村に問い合わせれば発行してもらえる。

注)地方自治体によってはこの証明書のことを「り災証明書」と呼んでいる場合がある。通常は住家の被害の程度を自治体が認定した証明書を「り災証明書」と呼んで、「被災証明書」とは区別している。

■雑損控除 
毎年2月の確定申告で、災害にあった時の損失を所得税から控除出来る。災害減免法による減免と雑損控除の2種類がある。被災度と損害の度合い、収入によってどちらか有利な方を選ぶことができる。雪に関しては、家財や住宅の損害の他に、除雪に掛かった費用を計上できる場合がある。2月の確定申告は前年の損害に対するもの。つまり今年2月の損害は来年2月の確定申告で控除することになることに注意が必要である。

■国税庁 豪雪の場合における雪下ろし費用等に係る雑損控除の取扱いについてhttps://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/810129/01.htm


国税庁動画チャンネル 災害等にあったときの税の軽減(出典:YouTube)

■自治体独自の制度に注意 
2014関東甲信豪雪では、自治体によってはカーポートの損害や撤去費用について何らかの助成を行うところがあった。

■除雪ボランティア  
2014関東甲信豪雪では各地で社会福祉協議会による雪害ボランティアセンターが設けられ、玄関から道路までの通路の確保等でボランティアが活躍した。自分で雪かきが難しい高齢者や身体障害者の方は、無理に自分でしようとせずボランティアを依頼するとよい。

(了)