平賀氏はここ10年間の課題が解決していないことに懸念を示す

「第14回グローバルリスク報告書2019年版」が1月に世界経済フォーラムから発表された。世界の学術界、政府、国際組織、NGO、企業などのリーダーにグローバルリスクについてアンケート形式で調査したものを反映させており、今後10年間に世界で発生するリスクの可能性と影響度を評価している。毎年1月に開催される世界経済フォーラム年次総会(通称:ダボス会議)の討議に活用されるほか、各国の政府や企業らの長期戦略策定にも影響を与えるとされている。

写真を拡大 2009~19年までのグローバルリスクの推移。第14回グローバルリスク報告書2019年版(マーシュジャパン株式会社/マーシュブローカージャパン株式会社による翻訳)無断転載を禁ず

今年(2019年)の調査では、地政学的・地経学的な緊張が最も緊急性の高いリスクであり、専門家の 90%は、2019年には主要国間で経済的対立がさらに高まると予想している。ただし、同報告書の編集に携わる、マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズのグループ会社で、保険仲立人大手のマーシュ ブローカー ジャパン代表取締役会長の平賀暁氏は、本質的なリスクは、2018年から大きく変わったわけではなく、むしろこの10年で挙げられてきた課題が解決していないまま放置されている状況に危機感を抱いていると指摘する。

今回の調査で、回答者約1000人の85%は主要国間の政治的対立を懸念。さらに、88%は多国間貿易の規制や協定のさらなる崩壊も予測している。しかし、発生の可能性が高いグローバルリスクの上位5位を見てみると、2011年以降自然災害や異常気象など、気候変動に伴うものが上位を占めている。平賀氏は「米中対立など地政学的なものに注目が最近は集まりがちではあるが、ここ10年程の課題を解決できていない」と警告する。

写真を拡大 今年のリスク上位を示した表。第14回グローバルリスク報告書2019年版(マーシュジャパン株式会社/マーシュブローカージャパン株式会社による翻訳)無断転載を禁ず

そのことを裏付けるように、2018年版より報告書には「Hindsight(振り返りの視点)」というコーナーがある。ここでは2008年にとりあげた食糧問題について再考。2000年代初頭に人口における飢餓率は15%程度あり、2015年には10.6%まで減少。しかしその後2年で4000万人近い飢餓人口の増加で、再び10.9%に上昇している。その背景には地球温暖化が影を落としており、1.5℃の気温上昇で3500万人が、3℃で18億人が作物不作の影響を受けると予測。このほか、昨年の報告書で取り上げられた「市民社会の空間」も長年放置されてきた問題だ。さまざまな事件や事故で社会的な信頼を低下させないような工夫が求められる。そしてインフラへの投資もだ。

平賀氏は「温暖化や都市への人の流入も進んでおり、インフラ投資も追いつかなくなっている」と指摘。長年の課題を解決できないまま、状況が深刻になりつつある状態に懸念を示した。

企業にとっても過去を振り返ってみることも大事だ。「困っていることが起こっている原因をしっかり把握できないと、同じリスクはまた起こるし、様々なリスクの源泉が実は同じということも考えられる」(平賀氏)。それゆえ、PDCAをしっかり回し、特に改善を強化しリスクの芽を摘むことが重要だとした。

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介