国際連合危険物輸送勧告に定める爆発物の表示の例(出典:Wikipedia、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%88%86%E7%99%BA%E7%89%A9#/media/File:Dangclass1.svg

私たちの周りにあるセキュリティ「モノ」についてお話をしています。今月は爆発物検知器について説明します。

爆発物検知器ってどんなモノ?

爆発物検知器は、その名前の通り、爆発物を、正確には爆発物の原料として使われる火薬や爆薬などを検知する機器です。火薬や爆薬の種類によって検知の仕方は様々ですが、目にする機会が多いのは拭き取り式の検知方法です。空港の保安検査場を通過するとき、荷物の確認として紙でカバンの取っ手や開閉部分を拭き取られたことがある方もいらっしゃるでしょう。爆発物を運んでいたり、製造したりした人にはその過程で手に火薬や爆薬の粒子が付着します。この粒子はなかなか取れません。そこで素手で触る部分を中心に紙で拭き取り、拭き取った紙を検知器に入れ、火薬や爆薬の粒子の有無を確認しています。 

爆発物検知器のライバルは犬

日本と同じように海外でも、空港、港、駅、裁判所、政府機関など多くの場所に爆発物検知器が設置されています。最近の検知器は、ユーザビリティに優れています。現場での使い方はとてもシンプル、メンテナンスも楽、小型化が進み、どこにでも設置しやすく、さらに検知可能な爆薬や火薬も増えています。性能がどんどん向上しており、私たちの安心・安全のために欠かせないものとなりました。しかしこれだけ優れた検知器であっても、どうしても勝てない相手がいます。それは犬の嗅覚です。

欧米ではイベント等の爆発物チェックのために検知器をセットしていたとしても、犬を必ず使います。人間の100万倍とも1億倍ともいわれる嗅覚を持つ犬たちは、爆薬や火薬を使った爆発物を正確に瞬時に発見することができます。瞬時性、直感性においては、どれほど高性能の検知器であってもまだまだ彼らには敵いません。犬なくして爆発物検知はなしえない状況です。

米国の大規模イベントでは犬が大活躍します。2013年のボストンマラソン爆弾テロの発生により、米国内で爆発物探知犬の需要が一気に高まりました。2014年のボストンマラソンはテロの翌年ということもあり、開催すら危ぶまれましたが、テロには絶対に屈しないというボストン市民の強い気持ちもあり、例年通り開催されました。前年と大きく違う点は、セキュリティレベルが大幅に上がったということです。爆発物探知犬の数が今までの2倍以上となり、そこら中に犬がいるという状況でした。マンホールの隙間、植木鉢の中、車の下など爆弾を隠しやすいスポットを重点的に犬たちに嗅がせ、爆発物の有無を徹底的に確認しました。安全にレースがスタートできる環境整備に、多くの犬たちが一役買って、ランナーも観客も安心してイベントを楽しむことができました。

テロの翌年の開催でテロがまた起きてしまう、それだけは絶対に避けなければなりません。国の威信をかけたビッグイベント、成功のためには犬のたち存在が不可欠でした。しかし、探知犬は一朝一夕で作り出せるわけではありません。2014年のボストンマラソンの警備を徹底的に行うためには、警察所属の探知犬だけでは足りず、軍からも借りるなどして、なんとか間に合わせたという状況でした。

性能の良い爆発物検知器が登場した今日でも犬の重要性に変わりはありません。しかし、彼らは生き物です。餌を与え、休息を取らせなければなりませんし、訓練するにも時間がかかります。検知器のようにスイッチを入れれば1日中集中して働くという状態は保てません。米国の研究機関では昆虫の性質を利用して、または科学的に変性させて爆発物を発見させようという大胆な意見もあるようですが、実現まではまだ遠いでしょう。

レガシーとして

爆発物検知器も探知犬もすでにこの世界に存在し、必要性も認識されています。2020年に日本で開催されるビッグイベントでも同然導入されることと思います。そのイベントに期待したいことがあります。「日本製の爆発物探知機」の登場です。モノ(4)で、液体物検査装置は非常に優れた日本製であると説明しましたが、爆発物検知器のほとんどは外国製です。それらは機能的にも優秀で、日本の空港や港や原子力施設などの重要施設にも導入されていますが、優れた日本製もぜひ登場してほしいですよね。

さて、メイド・イン・ジャパンの爆発物検知器、今後登場する可能性が全くないわけではありません。日本の企業も安全・安心のために研究を重ねていますから、2020年の各イベント会場に設置されるかもしれません。その性能が認められ、その後は世界の様々な場所で導入されていく、そんな爆発物検知器の登場をワクワクしながら待っているのは私だけではないと思います。

(了)