何気なく食べているカップ麺。いつでも、どこでも、誰でもおいしく食べられるカップ麺。そんなカップ麺が東日本大震災時の避難所でひんしゅくを買っていたことをご存じですか? 配られたカップ麺は本当にありがたかったでしょう。しかし、被災者が汁を残して捨てようとすると、待ったがかかりました。なんと捨て場がないというのです。「皆さん、残った汁を飲み干してください」という指示が出ました。はてな?? 高齢者は息をのみました。ああ、なんと辛いことよ……。

それから5年後には、熊本地震が発生しました。政府は支援物資として60万食のカップ麺を被災地に送りました。本当はありがたいはずですが、苦情が続出しました。なぜか。ガス、水道、電気の供給が停止していたからです。カップ麺は、熱湯なしではどうにもならないと……。

わたしはこの一連の事態を心に留め、考え続けてきました。そして、この記事を書くにあたり、本気で1つの実験に取りかかりました。「えっ?! どんな実験?!」行きつけのスーパーでカップ麺を10個ばかり買い、表示を丁寧に読み、麺と汁をすべて飲み干すという実験です。

「なんや、ちゃちな実験ですね」「確かにその通り」

しかし、表示を読むと2つのことがわかりました。

一つ:たくさんの熱湯が必要なこと。

二つ:塩分が驚くほど多いこと。

1個あたり水500ミリリットルが必要、塩分は6グラム!

さあ、見ていきましょう。

 

■まず、使う熱湯の量は、カップのふたに「これには何ミリリットルの熱湯が必要です」と丁寧に書かれています。それに従うと、1個につきざっと300~400ミリリットルの熱湯が必要です。なかでも金食い虫ならぬ“水”食い虫の王者は「うどん」で、400ミリリットルを超えています。これでお分かりのように、カップ麺1個につき500ミリリットルのペットボトル1本を準備する必要があります。

ところで、そもそもカップ麺は汁もの料理に属します。ご存じの通り、汁もの料理の汁を飲むと体が温まりますし、心がほっこりします。それに満腹感が得られます。本来なら、できれば汁を捨てずに飲み干したいと考えるでしょう。特に水分をとりにくい災害時はことさらです。

しかし、わたしは実験中、1種類のカップ麺だけは汁を飲み干しましたが、それ以外はすべて汁を残しました。なぜ、カップ麺の場合は汁を捨てたくなるのか。原因を考えてみると、塩味が濃すぎるからではないでしょうか? わたしが実験中に購入したカップ麺の1個あたりの塩分(食塩相当量)は、多いもので6グラム以上。少なめのものでも約3グラム含まれており、しかもカップ麺1種類だけでした。

なお、わたしが残した汁の量は、最初に加えた熱湯の量の約半分程度です。カップ麺の汁を飲み干す多くの人は、「これも銭(ぜに)のうちじゃ。飲まないと大損でっせ」という思いで飲み干しているのでしょうか?

厚生労働省が示す塩分量の2倍!

厚生労働省が示す1食分の塩分の摂取量(2019年の目標値)は、男性が約2.7グラム、女性が2.3グラム程度です。この値に比べると、カップ麺には約2~3倍もの塩分が含まれていることになり、大丈夫かなあとため息をついています。

災害時、水は貴重品ですし、熱湯を沸かすのも難しいことです。大変な思いでやっと熱湯を注いだのに「塩からい」といって汁を飲まないで捨てるのはどう考えても不自然で、「ヘン」としか言いようがありません。

では、どうすればいいでしょうか。
わたしは2つの提案を、1つは製造会社に対して、もう1つは消費者に対して、したいと思います。皆さんのご意見はいかがですか。

 

製造会社さんへ災害用のカップ麺を健康志向に改変していただきたい。

・調味料から塩分を減らしてください。1食3グラム以内の食塩相当量に……。

・できれば調味料は別袋で、液体ではなく粉末にしてください(理由は後述)。

・汁の食塩相当量を現行の約3分の1に減らし、1食2~3グラム程度にしてください。

・麺、かやくの食塩相当量が2グラム超の商品もありますが、できるだけ少なくしていただきたいです。麺が戻るときに汁の塩分も同時に吸い、麺が塩からくなるためです。ウーンと塩味を控えるようにしてください。

・企業はさぞかし反論するでしょうね。「そんなことぐらい、とうの昔からわかってますよ。ただ、ラインを変更したり設備投資をしなければ……」「嫌ですね。おことわり」。そんなこと言わないで、消費者の健康のためですから、ぜひお願いしますよ。と言っても効きめがないかもしれません。そうなれば次の手しかありません。

 

カップ麺の汁の塩分を3分の1にした場合

 

消費者は自己防衛の一手を

・消費者は、カップ麺を買うときに、食塩相当量の表示をよく見ましょう。食塩相当量が多いものは買わない。

・しかし、ヒイキの商品の塩分が多い場合もありますよね。そんなときは、よく切れるハサミを使って、調味料が入った袋の3分の2をチョキンと切り落とします。

残りの3分の1をカップ内に入れて熱湯を注ぎます。えっ?! 「残りはどうしますか」? それぐらいはお考えくださいよ。捨てます。

 
 

・こうした廃棄が増えるのは地球の汚染につながり嫌ですね。でも健康は自分で工夫するしかありませんから。このようにすると、カップ麺を完食できます。

ここでオーディエンスの反応はいかに

2019年2月21日、東京都北区のある会場で「災害時もいかに健康を保持するか!」という講演をさせていただきました。お聞きいただいたのは、バリバリの専門家である管理栄養士の皆さんです。皆さまのお考えをぜひうかがいたいと思うわたしには、またとないチャンス。「逃すでないぞ」という、わたしの内なる叫びが聞こえました。そして、前述の提案についてのご意見をおそるおそる聞いてみました。ご意見を紙に書いていただいたら、「大賛成です」「SNSに書いたらどうか」「皆さんに知らせないと……」と(写真)。

塩分を心配するコメントがズラリ! 皆さん本当に心配しています
 

今回は、個人、企業、行政、避難所すべてにあてはまる備蓄としての即席麺、そして長期にわたる避難生活におけるその食べ方にフォーカスしてみました。

(了)

 
(了)