1社の不正発覚で業界全体のイメージが下がりかねません(写真:写真AC)

2017年、2018年は、大手メーカーによる品質データ改ざんなどの不正問題が相次ぎ報道されました。2006年、2007年にも産地偽装、賞味期限改ざんといったことが起こりました。「うちの業界にも、こういう悪い慣例があるな」と思った方は多いのではないでしょうか。今回は、このように業界全体が長年慣習として行ってきたことが突然不正として発覚してしまった時の対応について考えてみましょう。

 

責任を取って社長が会長に昇格?

M社の事例を追いかけてみましょう。M社は、2017年11月グループ会社で検査記録データの書き換え不正があったことを公表しましたが、翌年2018年2月にも追加で不正が発覚しました。なぜ、不正発覚の連鎖は続いたのでしょうか?

2018年3月28日に公表された特別調査委員会の最終報告書で私が着目したのは、不適切行為の原因・背景事情の項目です。指摘されたのは、先行して発覚していた不正事案(先行事案)をひとごとと考える企業風土です。「そもそも問題がよく分からないので、コンプライアンスといっても何をしてよいか分からない」といった社員のコメントは現場の実態をよく表しているといえます。「いつものようにやっていればいい」といった従来慣行への依拠、先行事案は「ひとごと」という意識、そして、自らの仕事の意味や「製造事業者としてのあるべき行動」を考えずに業務に追われていたことを指摘しています。さらに2018年6月には、本社でも検査記録データの書き換え不正が見つかり、グループ全体で問題製品の出荷先は800件以上になりました。その責任を取って社長は辞任して「会長」になることが発表されましたが、社長が会長になるのは責任を取る形として一般の人にどう見えるでしょうか? 社長が会長になるのは、通常は昇格人事ではないでしょうか。責任を取ったことにはならないのです。ここにM社が不正を繰り返す本当の理由が垣間見えます。どう見えるのか社長には言えない、上司には言えない、リスクを指摘できない企業風土があるということです。

何でも相談できる広報部の確立

責任の取り方には企業風土が濃厚に出てしまいます。こうなると抜本的に改革しなければなりませんが、コンプライアンス一辺倒で迫ると、雰囲気は暗くなってしまいます。そこで広報担当者の登場です。普段から良い情報を集める仕事だけでなく、悪い情報も集める「情報センター」としての役割を果たす部署として、広報部を機能させることをお勧めします。

今回紹介したような業界慣例の不正であれば、各社広報部が連携して謝罪し、その後も世間がどう受け止めているのか、どのような対応を期待しているのかを共同で調査して、再発防止に取り組むというような発想もあっていいと思います。そのためには、前提として、まず社内の風通しを良くすることが何より重要です。

ある大手アパレルの広報部長は「何でも相談してほしい、と各部署に呼び掛けている。そうすると良い情報も悪い情報も集まってきて、クライシス対応も早くなる」と情報収集力の重要性を語っていました。
「新サービス始めるから広報でプレスリリースしてほしい。でも、バグでサービス開始が遅れるリスクもある」「取材ではどんな服装にしたらいいか。どう見えるといいのだろうか」このような日常会話の連続が社内の風通しを良くしていきます。

経営における広報の意味は「Public Relations(パブリックリレーションズ、PR)であり、人々との信頼関係を構築するマネジメントになります。広報部では、企業が外からどう見えるか常に報道をモニタリングしているため、見え方のリスク感性が高く、コミュニケーション能力に長けた人が配置されるはずであり、そうでない人も所属しているうちに感性は高まります。悪い情報も「言い方」を考えて、ソフトランディングさせる能力があります。
それを実行できる力量を、あなたの会社の広報部も持ち合わせていると期待してください。

(了)