耐震基準適合以外に、立地や火災の影響も考慮する必要があります(出典:写真AC)

■建物・施設周りの重要箇所

「建物」については、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物には新耐震基準が適用されているので、この基準を目安に耐震補強の要・不要を検討するのも1つの方法である。しかし現実には、地震の2次的な被害としての火災や、場所によっては液状化、地盤沈下、土砂崩れ、津波などさまざまな要因で建物に被害が及ぶ可能性も否定できない。

どのような形で被害を受けるのかはそれぞれの災害の特性によるため、損害保険や防災的観点からの補強工事や移設などを視野に入れることが大切だ。地震に話を戻せば、免震ダンパーなどは有効な地震対策の一つとされていたが、肝心のメーカーによるデータ改ざん事件のあと、少なからず信頼を失ってしまったことは極めて遺憾なことである。

次に「シャッター・防犯システム」。過去の大地震では、地震の衝撃によりシャッターの開閉ができない、防犯システムの機能停止でドアの開閉ができないといった事故が実際に生じている。このような場合の対処方法と予防策について、それぞれの業者から説明を受けておくことが望ましいだろう。

「駐車場」も看過できない。特に地下駐車場などは地震の衝撃により出入りできなくなる可能性があるので、緊急時の車両の待避場所と手順を決めておくことが大切。埋立地などを駐車場として使用している場合は、液状化や地盤沈下で冠水してしまうリスクも考えられるので注意しよう。

■ 工場の災害リスクと対策

大地震が起こるたびに、工場内に複雑に張り巡らされた配管やダクト、様々な機械類の破損によって壊滅的な被害を受ける様を、私たちは繰り返し目の当たりにしてきた。しかしその一方で、地震に備える対策を事前に講じたことによって深刻な被害を免れた事例も枚挙にいとまがない。

工場の防災・減災対策にはある程度決まったやり方がある。例えば重要な生産設備(単体の機械装置など)をアンカーボルトやL字金具で固定したり、重心の高い縦長の装置の上部を3方からワイヤーで固定することによって、地震の衝撃による位置ズレや転倒による周囲の設備や壁の破損を避けることができる。また、天井クレーンはガレキの撤去などに威力を発揮する。

他に重要なものとして次の3つがある。

(1)受電設備の対策
日頃はあまり目に触れない場所にある受電設備(キュービクル)や電気室は工場の心臓部と言っても過言ではない。地震の衝撃やその間接的被害としての火災、液状化、地盤沈下、水害により影響を受ける可能性があるため、被災した場合の仮復旧手順を決めておくとともに、これらが浸水被害を受ける可能性があるなら、思い切って安全な高い場所に移設するなどの工夫も必要だろう。

(2)交通インフラの寸断や輸送手段確保の問題
自家用トラックで工場から入出荷を行っている場合、災害時にはそれ自体がボトルネックになる可能性がある。日ごろから外部の運送業者を開拓しておくことが大切。一般に運送業界は、非常時の業者間連携や輸送ルートのノウハウを駆使して流通のマヒを乗り切れることが期待できる。陸路以外に海路(貨物船やフェリー)や空路(貨物輸送機)のオプションを視野に入れておくことも有効である。

(3)仕入先の被災への対応
仕入先からの部品、原材料などが不足・欠品することを想定した事前対策として、例えば重要品目については自社のストックを増やす、複数の拠点(製造元や地方の事業拠点など)に分散保管する、少し時間をかけて代替調達先を開拓する、特殊性の高い希少な部品や原材料の割合を減らし、汎用品に切り替える、といった方法などが考えられる。仕入先の被災はBCPの未策定や防災意識の低さが一因となっているケースも少なくない。仕入先にもBCPを策定するよう働きかけたいものである。

■倉庫内の防災対策

通販の成長とともに物流拠点にある倉庫は大型化している。一度被害を受ければ商品供給の機能不全が長期化する。2017年2月に起こった大規模な「アスクル倉庫火災」では、完全復旧に半年以上を要し、損害額は101億円余りと言われている。出火原因はフォークリフト車のエンジンルーム部分に段ボール片が巻き込まれて発火するというきわめて特殊な事例ではあった。

しかしこのボヤ程度の火災を拡大させた原因として、近くに違法な量の危険物(殺虫剤など)や段ボールの山があったことも指摘されている。

上記は火災についての話だが、倉庫の地震対策はどうだろうか。たとえば中小の運輸・倉庫業では、倉庫内の荷崩れ対策を講じていないことが多い。というのは、トラックで集荷した荷物はフォークリフトで倉庫内に仮置きされ、半日も絶たないうちに別のトラックに移し替えて出荷するからだ。倉庫内が空っぽの時間帯も少なくないという。私が訪問した会社は製紙業が盛んな愛媛県四国中央市にあり、紙製品が多いことから、荷崩れによる損害リスクはある程度許容できると担当者は述べた。

一方、自社で生産し、出荷を待つばかりの製品が災害でダメージを受けることについては果たしてリスクを許容できるだろうか。筆者は2011年の東日本大震災の余波を受けたある自動車電装品メーカーの倉庫で、高価な電装部品の一部が荷崩れを起こして何十台も破損しているのを見たことがある。

倉庫の積み荷などは、積み荷の高さを制限したりパレット脱落防止金具などを取り付けたりすることで、ある程度荷崩れを防止できる。また前に述べたように、天井クレーンは構内が被災したときにガレキの撤去などに威力を発揮するので、脱輪防止装置などをつけておくにこしたことはない。

(了)