泡消火済の中には有害性が懸念されるものもある(出典:Wikipedia)

日本は2022年禁止へ

今、世界の消防本部で泡消火剤の廃棄処理と代替が問題になっている。

4月29日~5月10日にジュネーブ(スイス)において、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約(POPs条約)の第9回締約国会議(COP9)が開催され、新たに「ジコホル」および「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質」を同条約の附属書A(廃絶)に追加することが決定された。

アメリカではすでに10年以上も前に泡消火剤に使われている、有機フッ素化合物であるPFHxSなどとその塩および PFHxS 関連物質、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、「有機フッ素化合物」の一つであるPFOAが、環境への蓄積性や発がん性などがあることが指摘されていた。

■ストックホルム条約第9回締約国会議(COP9)が開催
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/files/pops/SCCOP9.pdf

これらの物質については、今後、国際的に協調して製造・使用等の廃絶に向けた取組を行うこととなるが、日本では「化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)に 基づき、早ければ2022年にも国内での製造・輸入・使用等を禁止する」としている。


Toxic Firefighting Foam Causing Cancer in People Living Near Military Bases (出典:YouTube)

上記映像でも語っているように、地域住民の生命・身体・財産を守る消防が、すでに発がん性のある毒物が含まれる泡消火剤と分かっていて使い続けることによって、地域住民の健康を害することがあったり、また、消防士自らの健康被害を予防するためにも継続的な使用があってはならないということ。

日米で議論の的に

アメリカでは泡消火訓練を定期的に行っていた各種実火訓練施設や消防学校、空港消防訓練施設など周辺から、高濃度の有機フッ素化合物の土壌汚染と水質汚染が確認されたが、地域を管轄する浄水場にPFOS、PFOAなどを除染する施設がなかったことから、周辺の汚染された水を飲んだり、赤ちゃんのミルクを作ったり、シャワーを浴びるなどをしていた住民が、がんになったり、赤ちゃんの奇形、幼児のさまざまな健康障害が報告されている。そのため付近の住民に血液検査などの健康調査を促し、土壌と水の除染なども早く取り掛かるべきだという地域住民の声も挙がっている。

日本では、石油コンビナートや地下駐車場などの泡消火設備でも、PFOS、PFOAを含む泡消火剤が使われており、身近に使われている。

5月15日放送のNHK「クローズアップ現代」でもPFOAの毒性がもたらす、環境への蓄積性や発がん性などがあること取り上げられた。

■クローズアップ現代:化学物質“水汚染” リスクとどう向き合うか
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4280/index.html

5月10日には、在沖米軍による泡消火剤などの土壌汚染について、国会でも指摘された。


屋良朝博「在沖米軍による土壌汚染」PFOS、PFOAなど 5/10衆院・環境委
(出典:YouTube)

すでにこれだけリスクの高い物質が消火剤に含まれているのであれば、本来、早急に使用を中止し、しかるべき廃棄方法で処分し、同等の消火能力を有する代替え泡消火剤がありそうだが、簡単ではなさそうだ。

実際に健康被害も

ただ、もし消防がやむを得ず他に消火方法の選択肢がなく、現場でPFOS、PFOAを含む泡消火剤使って、その土壌や水質が有機フッ素化合物で汚染されたことが証明されれば、たとえ正当防衛的な消防活動であっても、消防側の損害賠償、除染コストなども請求されたら免れない可能性もある。

アメリカでは、泡消火剤を使って訓練したり、現場で使用した消防士もPFOS、PFOAなど毒物の経皮吸収により、さまざまな健康障害を訴えている。

オクラホマ州では「約10年も前から、毒性が分かっていたにも関わらず、なぜもっと早く厳しく禁止しなかったのか?」として、化学消防車の隊員である消防士が、長年の泡消火剤の曝露(ばくろ)によって、ガンを発症したとして、泡消火剤の製造メーカーと販売会社に健康被害への責任を求める訴訟を起こしている。

総務省消防庁も2011年に下記の資料を環境省とともに出しているが、今でもPFOS、PFOAの泡消火剤を使って訓練したり、消火に使っている現状からすると、この資料の健康被害のリスクについての表現部分が非常に弱く、現場の消防本部に伝わっていないのではないかという現場消防隊員からの声もあるが、深刻に受け止めた消防本部とそうでない消防本部とかなりの温度差がある。

■PFOS含有泡消火薬剤を使用した 泡消火設備に関する取扱いについて 【第2版】
http://shosoko.or.jp/wp/wp-content/uploads/img/pp/pfos_awa_toriatsukai_r2.pdf

●訓練等における措置
「点検・訓練においてPFOS・PFOA等有機フッ素化合物を含んだ泡消火薬剤を放出した際、放出した泡消火薬剤を回収し、回収時の汚染物を密閉保管する」とあるが、大量に泡消火剤を放出した後の土壌に浸透してしまった泡をどうやって回収するのか?具体的には何も示していないが下記のように罰則も定められている。

●罰則について
改善命令を行ったにも関わらず、上記の義務(「取扱上の技術基準の適合義務」及び「譲渡・提供する場合の表示 義務」)を果たしていない場合、6カ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に処される。

●規制対象となる消火器・消火薬剤など
PFOSを含有する消火器や泡消火設備などについては、 以下のホームページで御確認できる。

(社)日本消火器工業会HP
http://www.jfema.or.jp/

(一社)日本消火装置工業会HP
http://www.shosoko.or.jp/

・化学物質審査規制法に基づく第一種特定化学物質に相当する化学物質に係る中央環境審議会の審議結果について
http://www.env.go.jp/chemi/kagaku/oshirase/cop4pops01.pdf

・化学物質の環境リスク評価 第6巻
http://www.env.go.jp/chemi/report/h19-03/index.htm
(ペルフルオロオクタンスルホン酸およびその塩)

■泡消化剤についての問い合わせ先
環境省 総合環境政策局
環境保健部 企画課 化学物質審査室
〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2
Tel: 03-3581-3351(代表)
Fax: 03-3581-3370
E-mail: chem@env.go.jp
http://www.env.go.jp/chemi/kagaku/pfos.html

総務省消防庁予防課
〒100-8927 東京都千代田区霞が関2-1-2
Tel: 03-5253-5111(代表)
Fax: 03-5253-7533

メガフォーム製造の国内シェアトップのDICでは「現在販売している泡消火薬剤は全てPFOSまたは使用しておりません」となっているが、「一部水成膜泡のトリエチレンテトラミンを含有する水成膜泡消火薬剤の劇物指定について。この度、弊社水成膜泡消火薬剤の一部品番に含まれるトリエチレンテトラミンが劇物指定されることとなりましたので、ご案内申し上げます。(2018年7月施行、猶予期間後10月1日適用)」と案内表示もあり、現場で安心して使える、安全な泡消火剤は難しいのかもしれない。

早急な取り組みを

すでにこれだけリスクの高い物質が泡消火剤に含まれていることは分かっているが、消防本部では下記の課題があるという。

・代替するにしても、泡消火剤と同等の消火能力のある消火剤の選択肢が国内メーカーにないこと(要再確認)。

・既存の高発泡のストレーナーなど、泡消火剤を発泡する装備や器具が新しい消火剤に適合するかが分からないこと。

・現在、備蓄しているPFOS、PFOAなどを含む泡消火剤の廃棄処理コストが、新規に購入するのと同じくらいかかること。

・原則として、新しい泡消火剤が見つかるまでは、既存の泡消火剤が毒性があること、土壌汚染や健康被害リスクがあることを分かっていても、現場によっては人命救助や被害の拡大防止を優先して、やむを得ず、使用する選択肢を捨てきれないこと。

国際条約でも禁止された今、もし現場で既存の泡消火剤を使って、そのエリアが高濃度の有機フッ素化合物で汚染されたことが証明され、消防側の損害賠償、除染コストなども請求された場合、正当防衛や緊急避難行為として認められるのか?

アメリカでは、下記の泡消火剤が安全なものとして発表されているが、輸入コストや手続きなどが課題となっており、また、製造ライセンスの取得など、消火剤メーカーの早急な取り組みが国内の消防本部から期待されている。

■EPA・PFOA・PFOS規制についての包括的アクションプラン
https://www.epa.gov/newsreleases/epa-acting-administrator-announces-first-ever-comprehensive-nationwide-pfas-action-1

■F-500 Encapsulator Agent
http://www.hct-europe.com/en/products/extinguishing-agent/

F-500 Encapsulator Agent Highlight Video from Hazard Control Technologies  (出典:Vimeo)

■有機フッ素化合物フリーの泡消火剤
https://ipen.org/sites/default/files/documents/IPEN_F3_Position_Paper_POPRC-14_12September2018d.pdf

■PFOA/PFOS Legacy Fire Fighting Foam
https://www.nrt.org/sites/98/files/Legacy%20Foam%20RRT%20Presentation.pdf

(了)


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
https://irescue.jp
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