リアルタイム地震被害推定情報の配信イメージ(資料:REIC)

地震発生から10数分後には、どこでどの程度の建物が倒壊したか、どの程度の死傷者が出ている可能性があるかなど、建物や人の被害状況が即時に把握できるシステムが近く運用を開始する。これまで国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)が構築してきた「リアルタイム地震被害推定システム」から提供される推定情報を、今年の7月から、特定非営利活動法人のリアルタイム地震・防災情報利用協議会(REIC)が企業向けに配信する。 

過去の阪神・淡路大震災や東日本大震災などの大規模災害では、被害状況の全体像を把握するまでに多大な時間がかかり、避難や救助支援など初動対応が遅れるといった課題があった。被害を早期に推定し、その情報を迅速に提供できるようにすることは、災害対応における迅速な意思決定につながる。
このため、防災科研では、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として、2014年度から5年間をかけて、被害状況をリアルタイムに推定するシステムの構築を進めてきた。システムには、防災科研、気象庁、地方自治体による膨大な地震観測データが活用されていて、さらに、被害推定するにあたり、全国を対象とした約5600万棟の建物分布モデルと、時間帯別人口分布モデルが、250メートルメッシュ(全国で約600万メッシュ)に組み込まれている。関東・東海地域においては、地盤の微動観測結果に基づいて構築した地下構造モデルも加え、より精度よく地震動を推定し、高精度な被害推定ができるという。現在、リアルタイム地震被害推定情報で取得できるデータは、地震動分布、建物被害、震度暴露人口、人的被害となっている。

 

第一号にパナソニックなど

2016年4月に発生した熊本地震では、4月14日に発生した前震で発災の約29秒後から被害推定情報を配信し、10 分程度で完了。4月16日の本震でも11分程度で被害推定を完了した。「算出した被害推定情報は、その後調査した実際の被害情報と比較しても多少の過大評価の傾向は見られたものの、ほぼ同様の状況であったことが実証されている」(防災科研ニュース No.201)。

7月からこの情報を配信するREICは、緊急地震速報に必要な情報を、さまざまな用途に応じた配信サービス事業者向けに提供しているNPO法人。今回のリアルタイム地震被害推定情報でも、防災科研からのデータを、企業が所有するさまざまなGISに落とし込むことが可能な情報を提供し、第一号にはパナソニックなどが利活用を予定している。実際には、震度3以上の地震が発生した際、利用者が、REICのクラウドサーバーにアクセスすると、各地の被害状況が見られる形を想定。配信事業と併行して、企業のニーズや課題を把握してユーザーのサポートや拡大を図る活動を行っていく。

防災・減災活動につながる利活用例(資料:REIC)


当面は、REIC会員を対象に、年間40~50万程度で提供していく意向で、企業の事業継続計画(BCP)の策定や、防災・減災力強化に寄与することを目指す。

 

鹿島グループも配信開始

REICから配信される「リアルタイム地震被害推定情報」に、独自データを加えて配信するサービスも始まる。
ゼネコン大手、鹿島グループの株式会社イー・アール・エス(東京都港区)では、地震後30分以内を目途に、ユーザーが登録した個別建物について被害推定を行い、当該建物の点検の要否をメールで配信するサービスを同じく今年7月から開始する。REICから送られてくる情報は250メートルメッシュ単位だが、ここに、個別建物の位置情報、築年数、構造、建物階数、さらには鹿島が過去に施工した物件のデータベースを加えることで、個々の建物ごとの被害推定を可能にした。配信は、メールによる文字情報で、例えば、「A拠点:推定震度6強、緊急点検が必要」という形で、登録拠点の一覧が送られてくる。価格は登録のイニシャルコストが1棟あたり10万円で、月々のランニングコストは3.5万円(100棟程度まで定額)を予定している。将来的には独自に地図データ上に落とし込んだものを配信することも検討しているという。

(了)

取材:中澤