小学生がブロック塀(右奥の白い囲いの中)の下敷きとなり死亡した高槻市立寿栄小学校の校門前(2018年7月13日撮影)

大阪北部地震の圧死事故

2018年6月18日に起こった大阪北部地震から、もうすぐ1年になろうとしています。

この地震で大阪府高槻市では、子どもたちが最も守られるべき場所であるはずの小学校でブロック塀が倒壊し、小学生の命を奪いました。その後、小学校自体のブロック塀の撤去は急速に進みました。ところが、通学路はどうでしょう? 大阪北部地震では、通学の見守りをされていた方もブロック塀の倒壊で命を落としています。個人宅のブロック塀の撤去は、学校ほど進んでいないのが実情です。

「個人のものだから撤去をお願いしにくい」「助成金があっても、半額しか補助されないなど条件があるので撤去に踏み出せない」。

そんな声もある中、対策に向けて一歩踏み出した新しい動きがあります。皆さまの地域の参考にしていただければと思います。

上限60万のブロック塀撤去補助金で個人の支出額0になることも可能な田野町

まずは、こちら。高知県安芸郡田野町。

田野町はHPで「四国一面積が小さくて、四国一魅力的な町」として紹介されています。

風光明媚な場所ですね! そして、こちらが田野町のハザードマップ

太平洋に面した高知県では、南海トラフ地震が起こった際の津波到着時間が早いと想定されています。田野町の沿岸部でも、5分以内に津波が到着する場所もあります。でも、高知県の防災の取り組みは、全国でも最先端であるものも多いです。行政も地域の方も企業もわが事として真剣に考えているからでしょうか、最新防災情報というと、これも高知発? というケースは結構あります。

ここ田野町では、ブロック塀対策で先進的な取り組みを始めました。津波からの素早い避難のためには、倒壊したブロック塀が道を塞ぐことはあってはなりません。

田野町では、高知県の事業と合わせて合計40万円の補助金を出していました。そして、今回、さらに田野町が決めた避難ルート沿いのブロック塀には20万円上乗せして、合計60万円の補助金が出ることになりました。

60万円の補助で、撤去と新規の塀を作ることができるのです。60万円! 豪華な塀にしてしまうと、上限60万円を超えるケースもあるかもしれませんが、一般的な撤去と新規の塀となると、金額内に収まることが多いので、実質的に負担金0円で撤去&新規の塀の設置が可能になります。

補助金制度の壁

自治体によっては、上限は30万円だけれども、総額の2分の1の補助というように全額補助とならないようにする制度が多いのです。これだと60万円かかった場合、30万円の補助、30万円の場合は15万の補助となるので、自腹で半額支払うということがハードルになりがちです。

この半額しばりは、補助金あるあるなのです。全額補助とすると個人の財産となるので、憲法29条の私有財産制や、行政の公共性に反するのではないかと心配される自治体もあるからです。

「29条ドグマ」と言われるこの問題は、話すと災害救助法の弾力的運用とも関わる壮大な話になるので、ここでは深入りしません。でも、高知県の多くの市町村の補助金には、金額の上限以外のしばりがない市町村が多いです。本気で地震対策と津波避難を考えているところは、避難経路を整えることは命に関わり公共性が高いので、上限まで補助金がそのまま使えるようになっています。こんな自治体が増えればいいなと思っています。

田野町のこの制度は、周知が始まったばかり。60万円まで増額した補助金で、倒壊するブロック塀のない避難道が実現されるのが楽しみです。

そんな本気のブロック塀対策をはじめた田野町を応援したい方には、ふるさと納税がありますので、ご紹介します。塩バニラコーンアイス…気になります!!

自治会や自主防災組織の1割と行政9割負担で撤去 個人でなくても補助金を申請できる串本町

次の本気の自治体は和歌山県串本町です。

和歌山県串本町は本州最南端の町です。

串本町HPより

串本町も南海トラフ地震で津波到着時間が早く、5分以内という場所があります。ですので、避難道のブロック塀対策が重要になります。

串本町の補助金額はこちらです。

撤去は費用の10分の9までで上限30万円となっています。撤去について10分の9補助額があることも特徴的ですが、もうひとつ、とても画期的な制度が串本町にはあるのです。

それは、2014年4月に施行された<串本町地震・津波避難路確保のための補助金交付要綱>の中の以下の条文です。


第3条 補助金の交付を受けることができる者は、次に掲げる者とする。
(1) 串本町内の道路に面するブロック塀等若しくは土地を所有する者又は管理する者
(2) 町長が認める自治会又は自主防災組織

https://www.town.kushimoto.wakayama.jp/reiki_int/reiki_honbun/r218RG00000429.html

注目すべきは(2)です。補助金の交付が受け取ることができる者に「町長が認める自治会又は自主防災組織」が新しく付け加えられました。

これが入ったことで何が変わるか分かりますか? 自宅のブロック塀を撤去する場合だけでなく、自治会や自主防災組織が避難の際、危ないと判断した他人のブロック塀について、自治会や自主防災組織が補助金を申請できることになるのです。

これ、すごくないですか? 串本町に問い合わせたところ、自治会や自主防災組織は、所有者の承諾と印鑑をもらい、行政に申請するとのことです。そうすると、撤去についていえば、9割が補助金、1割は、自治会や自主防災組織の負担で地域の危ないブロック塀を撤去できるようになります。所有者の負担は0円です。

地域の人があそこは危ないなと思っても何も言いだせずにいるという状況はよく耳にします。所有者もあそこは空き家で放置しているからなんて事もあります。そんな状況でもブロック塀が撤去できるよう地域住民を後押しする制度ですよね。行政任せにしないで、自治会や自主防災組織が、積極的に津波避難に取り組む事にもつながるので画期的な方法だと思っています。しかも、既存の補助金の額を変えなくても、要綱で補助金交付者を拡大するだけでいいのです。追加でかかる予算は不要です。他の自治体もすぐに実践できるのではないでしょうか?

実際に串本町でも、自治会や自主防で申請できたらいいのにという声があったから要綱を変更されたとのことで、すでに1件の実績があるとのことです。

こんな頭脳派な解決を図った串本町のふるさと納税は干物が人気なんですね!

ソフト面からブロック塀撤去を推進 国土交通省

次に、補助金の金額というハード面ではなく串本町のように、地域のつながりでブロック塀の撤去も推進しているのが国土交通省です。

図の右側にあるように、危険なブロック塀の注意喚起というソフト面の補助金が昨年の補正予算拡充事業として今年から実施されることになりました。

具体的には、モデル事業として、徳島県・高知県・高槻市・静岡市が実施することが決まっています。実際どのような事業になるか、自治体が調整中です。静岡市については、建築関係者らで組織する協議会を設置して、ブロック塀の点検とともに撤去にむけて動ける仕組みをこれから作っていく予定になっています。

国産木材の有効利用とブロック塀撤去に動く東京都

以前ブロック塀の撤去と杉などの木材の有効利用を一挙解決の政策提言をこちらでしましたが、

■花粉症と防災・減災の一挙解決!危険なブロック塀を杉の塀に変えよう!
危険なブロック塀を減らす解決策3つ
https://www.risktaisaku.com/articles/-/5240

東京都が3月に国産材利用推進とブロック塀撤去のリンクを打ち出しました。

設置の考え方や樹種はこちらです。

木材でも、難燃素材や耐久性があるものが出てきたり、木材からできるセルロースナノファイバーはガラス代用品まで作れる昨今ですから、この木材利用は可能性が広がりそうです!

自分の塀から変える、地域を動かす防災士の活躍

最後にご紹介するのは地域の防災士さんの取り組みです。清流の国ぎふ 女性防災士会会長・伊藤三枝子さんは、まずご自宅のブロック塀を撤去されました。

撤去されると外から見えるので不安になったものの、ブロック塀がある時には気づかなかった事がわかったとおっしゃる伊藤さん。この近くの公園に遊びに来る赤ちゃん連れや親子が塀の前を毎日通っていることが見えたのだそうです。ブロック塀を撤去して本当によかったとおっしゃっていました。まず自分から始める。大事ですよね!

次にNPO法人日本防災士会長野県支部事務局長の塩沢裕己さんのお話しです。塩沢さんは、地区の自主防災会で会合を行った際に防災士として以下のように提案されました。

・地区内の危険な箇所を把握して地図に落としておきましょう。
・特にブロック塀のお宅については、強度チェックについてのチラシなど配布しましょう。
・危険であれば市の補助金を利用出来ることを伝えて撤去やコンクリート以外の塀にしてもらうようお願いしましょう。

この提案を真摯に受け止めた自主防災会の役員の方が地区内を歩き、地図に落とし込みブロック塀のお宅に強度チェックと撤去のお願いをされました。それをまた真摯に受け止めてくださった所有者の方がアルミ製の塀に変更されました。

地域でつながりのある方からきちんと説明してもらうと違いますよね。地図に落とし込むことからどうしたらいいかまでわかりやすく説明された塩沢さんと、それに心動かされ、足を運んだ自主防災会の方、そして、実際に塀を代えてくださった地域の方の連携が素敵です。

危険なブロック塀の撤去は地域を新しく繋ぐ力にもなるかもしれません。皆さんの地域でもぜひ、新しい動きを参考に、できることから始めていただきたいです。

もう誰一人、ブロック塀で人が亡くなってはいけません。

(了)