通信インフラしての使命


新技術を使った対策へ

 

被災時に、安否確認や被災状況を把握するために、欠かせないのが携帯電話や固定電話などの通信インフラの存在だ。東日本大震災では、通信サービスの多くが、東北関東地方を中心に広範囲に渡って中断した。・震災後の通信サービス業の対応について、NTTドコモに話を聞いた。

 

■東北の基地局の半数が中断
東日本大震災では、地震や津波の影響により、東北・関東地方を中心に通信インフラが甚大な被害を受けた。 

NTTドコモ(以下、ドコモ)では、震災直後から電波を中継する基地局の電源の途絶や装置の被災により、最大で約6700局のサービスが中断した。特に津波の被害が大きかった地域では、基地局そのものが流されてしまったり、基地局とつながる伝送路が切断されるなどの被害を受けた。

■災害対策本部が被災情報を一元化
震災後の復旧に向けたドコモの対応は早かった。震災直後から本社と東北支社に災害対策本部を設置。電話会議システムにより24時間密接に連携できる体制を構築し、対策本部が中心となって従業員の安否や被災状況の把握に奔走した。

「サービスの中断状況については、日頃からオペレーションセンターが集中管理しているため、直ぐに遠隔監視で把握できました。一方、中断した基地局の被災状況は実際に現地で確認しなければならず、現地から集まってくる情報を災害対策本部で一元管理しました」と同社サービス運営部災害対策室室長の福島弘典氏は話す。

■通信規制により通信ダウンを回避
震災直後は、多くのドコモのユーザーが携帯電話を利用したことにより、通信回線が通常時の50倍から60倍に急増し、一時的に首都圏範囲でも通話サービスが輻輳した。

ドコモは、災害対策基本法により、国や地方公共団体とともに国民保護のための活動を担う指定公共機関となっている。国や都道府県が復旧活動を行う上でも、早期に通信環境を確保する必要があった。

急激な通信量の増加により、回線がダウンすることを防ぐために、同社では最大90%の通話規制を行った。規制したことで、つながりにくくなった通話サービスの代替策として、安否確認用に、音声通話と比べて比較的輻輳に強いパケット通信を利用した「災害用伝言板」を開設した。

■4月末までにほぼ復旧
地震や津波の直接的な被害がなかった地域の通信インフラにも震災の影響は及んだ。関東から東北まで広い範囲で発生した停電により、電気の復旧が遅れた地域では、基地局が非常用の蓄電池を使い果たしてしまい、電源を喪失したためだ。サービス範囲が広いドコモは、携帯電話の業界の中で最も大きな被害を受けた。実際、震災当日よりも、2日目の12日の方が、通信サービスが中断した局数は多く、サービスが中断した内訳の中で、停電は実に85%程を占めていた。

そのため、中断した基地局のうち優先度の高いエリアから応急復旧することが、初期の最も重要な復旧業務となった。

「サービス中断基地局数が多かったことや、被災による道路の遮断などの障害があり、一度ですべての基地局の復旧対応をすることは困難だと判断しました」と福島氏は話す。結果的にサービス中断した基地局に対し、優先度の高いものから移動電源車と呼ばれる発電装置を積んだ車を派遣して電力供給したり、基地局が損壊した場所については、移動基地局車(写真)を代替で設置したりした。地域の対策本部に無償で衛星携帯電話を貸し出す対応も行った。さらに、山上などの高度の高い場所にある基地局では、電波の発射角度を調節することで、1つの基地局でカバーできる範囲を広げるなどの工夫で、被災地域の通信手段を確保した。こうした取り組みにより、4月末までには、山間部など対応が困難な一部の場所を除いてほぼすべての基地局が復旧した。

■新技術を活用した対策
津波による被災や広域の長時間にわたる停電など、多くの問題に直面しながらも、迅速に対応し早期に事業を復旧できたのは、これまでの災害対策として、復旧業務の優先付けや電力供給のバックアップ体制などを整備してきたことが大きいとする。「一昨年に実施した東海地震を想定した訓練の中では、全国からの支援活動の実施など、今回の震災対応と実際に重なる点が多かったため、対策本部はスムーズに動くことができました」と福島氏は話す。

現在ドコモでは、東日本大震災の経験を基に、今後の災害対応の見直しを行っている。災害対応のマニュアルについても、今回の震災で得られたノウハウを反映させ、今後の災害時にも、より迅速で効果の高い対応ができる内容に改訂する予定だという。 

設備面の強化では、今回の震災で、山上にある局などを積極的に活用し広範囲をカバーさせた方法が効果的だったことから、都道府県毎に概ね2カ所、全国で新たに100カ所ほどの「大ゾーン基地局」を設置する計画を進めている。(写真)また、今回の地震の被害の8割以上が停電であったことを踏まえ、都道府県庁や市区町村役場などの通信を最低でも24時間確保するため、1900カ所の基地局の無停電化や、非常用バッテリーの容量が24時間対応できるような拡充をしていく。加えて、発災後、速やかにサービス中断エリアにおける通信を確保するために、避難所に衛星電話の貸し出せる台数を3000台まで増加させる予定とする。 

災害時における通話サービスの向上については、震災時に声を聞きたいというニーズや、簡単な操作で使えるものへのニーズが多かったことから、音声をファイルとしてパケットネットワークで効率的に伝送し、サーバを介して、音声メッセージを相手に届ける「災害用音声お届けサービス」の開発を行っているという。